秋田港・能代港沖の洋上風力発電

秋田港・能代港沖 洋上風力発電

秋田港と能代港の沖合で進められている洋上風力発電事業は、2022年の商業運転開始を目指し、日本国内で初めてとなる本格的な商業ベースでの大規模洋上風力発電として注目されています。

概要

本事業は、秋田港（秋田県秋田市）と能代港（同能代市）の港湾区域内に、それぞれ13基と20基の着床式風力発電設備を設置し、合計で約14万kWの発電能力を目指す計画です。これは、一般家庭約13万世帯分の電力に相当します。

使用される風力発電設備は、1基あたり約4,200kWの発電能力を持つMHIベスタス製です。MHIベスタスは、ベスタスと三菱重工業の合弁会社であり、洋上風力発電分野で世界的な実績を持っています。

事業主体は秋田洋上風力発電株式会社（AOW）です。AOWは、丸紅を筆頭株主とし、関西電力、中部電力、東北自然エネルギー（東北電力の関連会社）、コスモエコパワー（コスモエネルギーホールディングスの子会社）、大林組といった秋田県外の企業6社に加え、秋田銀行をはじめとする秋田県内の企業7社が出資する特別目的会社（SPC）として設立されました。

事業期間は20年間を予定しており、発電された電力は固定価格買取制度に基づき東北電力に売却されます。総投資額は約1,000億円にのぼり、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のメガバンク3行が共同主幹事行となり、国内外の金融機関からの協調融資によって資金が調達されています。

建設までの経緯

秋田県は、日本海に面し、年間を通じて安定した風況に恵まれていることから、風力発電の適地として知られています。県は、再生可能エネルギーの導入を推進するため、2014年に「秋田港・能代港再生可能エネルギー導入検討協議会」を設置しました。

協議会では、有識者、港湾利用者、漁業関係者、報道関係者、行政関係者などが集まり、秋田・能代両港の港湾区域内での適地選定、風車の設置想定、予想される課題の洗い出しなどが行われました。その結果、両港ともに年間平均風速が6.5～7m/s以上と、事業化の目安を満たすことが確認されました。

2015年2月には、秋田県が事業者の公募を行い、応募した2事業者の中から丸紅が選定されました。その後、丸紅、大林組、エコ・パワー株式会社による環境アセスメントが実施され、環境大臣や経済産業大臣からの意見を踏まえ、環境保全措置の検討が進められました。

2016年4月には、丸紅などが出資する特別目的会社、秋田洋上風力発電株式会社（AOW）が設立され、事業化に向けた調査が共同で行われました。2020年2月には正式に事業化が決定し、建設段階へと移行しました。

秋田港と能代港は、鹿島港、北九州港とともに、2020年8月に洋上風力の整備港としても指定されています。

2020年2月には、AOWが能代市内に大型風車の維持管理拠点を設置することが発表され、3月には工事を受注した鹿島・住友電工JVによって本格的な工事が開始されました。また、丸紅はイギリスのシージャックス社と基礎据付工事の契約を締結し、洋上風力据付船を導入しました。

モノパイル式の基礎を港湾内に打設するため、シージャックス社が保有する自己昇降式作業台船（SEP船）「ザラタン」号が、同社の日本法人シージャックス・ジャパンによって傭船されました。「ザラタン」号は2021年4月20日に秋田港に入港し、能代港では5月11日から、秋田港では6月11日から打設作業が開始されました。

しかし、工事の騒音に対して市民から苦情が寄せられるなどの問題も発生しました。工事の進捗に伴い、AOWの出資企業である大森建設など4社によって作業船運航会社「アキタOWサービス」が設立され、作業員の輸送船「レッドスター」号が新造されました。

基礎の打設工事は2021年9月に完了し、風車本体の設置工事は2022年に入ってから開始される予定です。2021年10月8日には、秋田市土崎港にある商業施設「秋田ベイパラダイス」内に、秋田洋上風力発電の展示紹介コーナーが設置されました。

今後の展望

秋田港・能代港沖の洋上風力発電事業は、再生可能エネルギーの普及と地域の活性化に貢献することが期待されています。しかし、建設コストや環境への影響、地域住民との共生など、克服すべき課題も存在します。今後の動向が注目されます。

もう一度検索