秦宗権

秦宗権（しんそうけん）：唐代末期の残虐な武人

秦宗権（8XX年 - 889年4月1日）は、唐代末期に蔡州節度使を務めた人物です。その極端な残忍さで歴史に名を残しました。最終的には、汴梁節度使の朱全忠によって捕らえられ、処刑されました。

生涯

秦宗権は蔡州上蔡県（現在の河南省駐馬店市）の出身で、当初は許州で衙門の将校として勤務していました。唐末の混乱に乗じて、広明元年（880年）に蔡州を占拠し、実権を握ります。

同年、黄巣の乱が発生し、長安が陥落すると、僖宗は蜀へと避難しました。秦宗権は、監軍の楊復光と共に蔡州軍を率いて黄巣の鎮圧に協力します。

しかし、その後黄巣軍が蔡州に侵攻すると、秦宗権は敗北し、黄巣に降伏。「蔡州節度使」の称号を保持したまま、黄巣軍に合流し、陳州攻略に参加します。陳州刺史の趙犨の抵抗により攻略は長期化。朱全忠、周岌、時溥らが救援に駆けつけますが、膠着状態が続きました。朱全忠は李克用に援軍を要請。中和4年（884年）、李克用が沙陀族と漢人からなる大軍を率いて到着し、陳州の包囲を解きました。

中和4年（884年）6月17日、黄巣は泰山の狼虎谷で敗れて死亡。秦宗権は蔡州を拠点に皇帝を自称し、周辺地域で略奪を繰り返しました。その被害は甚大で、「西は関内、東は青齊、南は江淮、北は衛滑に至るまで、魚は腐り、鳥は散り、人々は途絶え、草木が野を覆った」と記録されています。かつての協力者であった鹿晏弘をも攻撃し、その残虐性は黄巣を凌ぐほどでした。

秦宗権の軍隊は、移動の際に人肉の塩漬けを食糧として携行し、一般民衆を誘拐・殺害して食用とするなど、常軌を逸した行為を行っていました。僖宗は秦宗権に反省を促し、使相に任命したり、王に封じたりしましたが、彼は一切応じませんでした。

昭宗が即位すると、時溥を蔡州四面行営兵馬都統に任命して秦宗権討伐を命じますが、時溥は動こうとしませんでした。そこで、昭宗は朱全忠を都統に任命します。

光啓3年（887年）、秦宗権は汴州（現在の河南省開封市）を全力で攻撃しますが、朱全忠は義成軍を奪い、朱宣、朱瑾と同盟を結び、秦宗権を打ち破ります。孫儒らが各地を放棄して逃亡する中、秦宗権は淮南を奪取。弟の秦宗衡を派遣して勝利を重ねますが、孫儒は帰還を拒否し、秦宗衡を殺害して軍の指揮権を奪いました。朱全忠は蔡州を包囲し、食糧不足に苦しめますが、秦宗権が他の軍閥を攻撃した隙に、許州を奪い返します。

龍紀元年（889年）、秦宗権は部下の郭璠に捕らえられ、朱全忠に引き渡されます。同年、長安へ送られ、独柳で斬首されました。京兆尹の孫揆が処刑を監督する中、秦宗権は「尚書は宗権を反逆者だと思うか？私の忠心が表現できなかっただけだ」と叫び、周囲の失笑を買ったと伝えられています。妻の趙氏も斬首され、鞭打たれたと記録されています。

秦宗権の死後、孫儒の残党は馬殷によって楚を建国。秦宗権の弟である秦彦暉は、かつて秦宗衡に従っていましたが、後に馬殷に仕え、楚の将軍となりました。

秦宗権の生涯は、唐朝末期の混乱と、地方勢力の台頭、そしてその中で繰り広げられた凄惨な争いを象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

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