李克用

李克用（り こくよう）

李克用（856年 - 908年）は、中国・唐末期の軍閥指導者で、沙陀部出身です。後唐の太祖武帝と追号され、荘宗李存勗の父、明宗李嗣源の仮父としても知られています。隻眼であったことから「独眼龍」の異名を持ち、唐末の混乱期にその武勇を轟かせました。

生涯

声望を得るまで

李克用の本姓は朱邪であり、父の朱邪赤心は朔州刺史を務め、龐勛の乱鎮圧で功績を挙げ、唐の国姓「李」を賜り、李国昌と改名しました。後に孫の李存勗により、文帝の諡と献祖の廟号が贈られています。李克用は李国昌の三男として生まれ、幼少の頃から片目が不自由であったため、「独眼龍」と呼ばれていました。

878年、父と共に唐の将軍を殺害したことから唐に反乱を起こしましたが敗北し、韃靼族の部落に逃亡しました。唐は韃靼に賄賂を送り李克用らを捕えようとしましたが、李克用は韃靼の有力者を前に、矢で木の葉や糸に吊るした針を射抜く百発百中の腕前を披露し、彼らを心服させました。

黄巣の乱での活躍

882年、唐に帰順した李克用は雁門節度使に任命され、黄巣討伐を命じられました。4万の兵を率いて黄巣軍を破り、883年には京師東北面行営都統に任命されました。その後も黄巣軍を打ち破り、黄巣は長安を放棄して逃走、朱全忠の本拠地である陳州を包囲しました。朱全忠は李克用に援軍を求め、李克用は黄巣軍を撃退し陳州を救援。さらに追撃して黄巣軍をほぼ壊滅させ、開封に追い散らしました。

884年、山東で黄巣軍を完全に壊滅させ、黄巣を自殺に追い込みました。これらの功績により、李克用は河東節度使（晋陽を中心とした一帯）に昇格し、黄巣討伐の殊勲者となりました。895年には晋王に封ぜられ、山西一帯を制圧する大軍閥となりました。

朱全忠との対立

黄巣の乱により唐王朝の権威が失墜すると、李克用ら有力者が覇権を争う時代となりました。その中で、李克用の最大の敵となったのが、元黄巣軍の幹部で後に唐に帰順した朱全忠でした。二人の対立は、李克用が陳州を救援した時から始まっていました。

朱全忠は、李克用に感謝の意を示すため盛大な宴を開いてもてなしましたが、李克用は朱全忠の存在を快く思わず、その丁重な応対も嫌らしく感じていました。李克用は朱全忠に対し、「朝廷のために賊を討っただけであり、礼を言われる覚えはない。それに黄巣は貴殿の元の君主、さぞや戦いにくいでしょうな」と皮肉を言いました。朱全忠は怒りを抑え作り笑いで応対しましたが、李克用とその部下が酩酊したのを見計らい、自軍の兵で李克用を襲撃しました。李克用は辛くも包囲を脱出し、朱全忠との間に不倶戴天の恨みを抱くことになりました。

李克用は戦争には強かったものの、政治戦略では朱全忠に劣り、また配下の鴉軍の勇猛さが粗暴と見なされたため、政府からの評判は高くありませんでした。朱全忠とは何度も激しい戦いを繰り広げましたが、901年に朱全忠に河中を抑えられたことで中央への進出が難しくなり、太原に閉じ込められた状態となりました。

907年、朱全忠によって唐が滅亡し、後梁が建てられました。李克用はこれを認めませんでした。

最期

907年、契丹の耶律阿保機が30万の大軍を率いて雲州に侵入しました。李克用は後梁の朱全忠との対立中で、契丹との交戦は得策ではないと考え、耶律阿保機と兄弟の誓いを立てて親睦を結び、共に朱全忠を討つ事を誓い合いました。

908年1月、李克用は朱全忠打倒を子の李存勗に託し、53歳で死去しました。

人物

李克用の軍は黒い衣装で統一されていたことから、鴉軍と呼ばれ、その勇猛さは周囲から恐れられていました。鴉軍の報告を聞いただけで黄巣軍が崩れ落ちるほど、その軍勢は精強だったと伝えられています。軍事的な才能は非常に優れていた一方、政略や謀略では朱全忠に遅れを取る面がありました。耶律阿保機と和約を結んだ際も、家臣が耶律阿保機を捕虜にすることを進言したにもかかわらず退けたばかりに、耶律阿保機は帰国後に心変わりして朱全忠と手を組み、李克用を討とうとしたため、李克用は深く後悔したと伝えられています。

宗室

后妃

秦国夫人劉氏（正妻、李克用の死後に皇太妃）
次妃曹氏（貞簡皇后）
魏国夫人陳氏
夫人張氏（李匡籌の妻）

兄弟

弟：李克譲、李克恭、李克寧
従弟：李克脩

男子

荘宗李存勗
永王李存覇
邕王李存美
薛王李存礼
申王李存渥
睦王李存乂
通王李存確
雅王李存紀

女子

福慶公主（後蜀の高祖孟知祥の皇后）

仮子

李嗣源、李嗣昭（韓進通）、李存信（張汚落）、李存進（孫重進）、李嗣本、李嗣恩、李存璋、李存審（符存審）、李存賢（王賢）、李存孝（安敬思）、史敬思

参考文献

駒田信二; 常石茂『新十八史略5』河出書房新社、1997年8月。

関連項目

十三太保

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