稲垣清 (海軍軍人)

稲垣清の生涯と真珠湾攻撃

稲垣清（いながき きよし）は、1915年11月23日に三重県一志郡川合村（現在の津市）で生まれました。若い頃から海軍に身を投じ、1934年には広島県の呉海兵団に入団しました。訓練を経て、駆逐艦「早苗」に乗り込むことでその海軍生活が始まりました。続いて海軍水雷学校に入校し、駆逐艦「呉竹」に着任。その後も水雷術に関する高等科を修了し、海軍の専門技術を身に付けました。

1941年11月18日、稲垣は特別攻撃隊員として潜水艦「伊24」に乗り込み、真珠湾への攻撃任務に向かいました。彼の凛々しい姿勢と強い決意は、彼の行動に色濃く表れています。

同年12月8日、稲垣は特殊潜航艇に艇長の酒巻和男少尉と共に真珠湾攻撃を実行しました。しかし、出撃の際に艇のジャイロに問題が発生したものの、彼は任務を遂行するため強行出撃を決意します。湾内に進行する中、米軍の駆逐艦ヘルムに発見され、攻撃を受けました。彼らは攻撃を回避するも、座礁を繰り返すうちに魚雷発射管が破損し、浸水による有毒ガスの発生が問題となり、作戦続行が困難に。しかし、母艦への撤退を決めるも、ワイマナロ湾で再度座礁し、そこで行動不能に。稲垣と酒巻は艦艇に時限爆弾を仕掛け、逃げることにしましたが、稲垣は漂流中に行方不明となります。

その後、稲垣の遺体は米軍によって発見されました。彼の戦死は太平洋戦争の中で数々の英霊の一人として記憶され、戦後には「真珠湾の九軍神」として称賛されました。稲垣は戦死後、二階級特進により海軍兵曹長に昇進し、1942年には生家で葬儀が営まれました。多くの人々が清を讃えるために訪れ、彼を偲ぶ声が絶え間なく寄せられました。

また、彼の生家の前の通りは「稲垣通り」と名付けられ、今なお地元の人々に親しまれています。1943年4月8日、日比谷公園斎場で行われた合同海軍葬には、多くの人々が参列しました。稲垣の御霊は靖国神社や故郷の三重県護国神社に祀られ、彼の功績が称えられ続けています。

終戦から約10年後、彼と同じ特殊潜航艇に乗り、捕虜となった酒巻少尉が清の墓参りに訪れた際、清の母は「なんで片方だけ」と漏らしたとされ、この言葉には深い無念の思いが込められていました。このエピソードは、稲垣の勇敢な戦士としての生涯と彼がどれほど戦友を大切にしていたかを物語っています。彼の名は歴史の中で堅く土台を築いており、今でも多くの人に語り継がれています。

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