穏城郡

穏城郡（オンソンぐん）

穏城郡は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の咸鏡北道に位置する郡であり、北朝鮮の統治範囲における最北端にあたります。名目上は大韓民国領土の最北端でもあります。豆満江を挟んで中華人民共和国吉林省延辺朝鮮族自治州図們市と対峙しており、図們国境大橋を通じて中朝間の物流における重要な役割を果たしています。

地理

穏城郡は、白頭山を源流とする豆満江が東北から東南へと流れを変える地点に位置しています。郡の南西は会寧市、南東は慶源郡と隣接し、豆満江を隔てて中国吉林省の延辺朝鮮族自治州と接しています。

歴史

この地域は、かつて高句麗や渤海などの勢力圏を経て、女真族の土地となり「多温平」と呼ばれていました。1440年、李氏朝鮮の世宗の時代に穏城郡が設置され、住民の移住が奨励されました。郡内にある旺戴山（王在山）は、1933年3月11日に金日成が抗日運動に関する会議を開催した場所とされ、北朝鮮では革命の聖地の一つとして重要視されています。

1952年の北朝鮮における郡面改編により、穏城郡の一部がセビョル面に編入されるなどして穏城郡が再編されました。1974年には、南西に隣接する鍾城郡の大部分が穏城郡に編入されています。

穏城第12号収容所における暴動事件

1987年5月、穏城郡に存在した穏城第12号収容所（倉坪地区）で大規模な暴動事件が発生しました。この事件では、1万5千人以上の政治犯のうち、5千人以上が虐殺されるという悲劇が起きました。事件の発端は、炭鉱で働いていた政治犯が保衛員に反抗したことであり、これに他の政治犯が加勢し、保衛員を殺害して山を越え、保衛員の社宅を襲撃する事態に発展しました。最終的に5千人以上の政治犯が事件に関与したとされています。収容所側は高射砲や機関銃で武装し、収容所を包囲して無差別に射撃を行い、事件後、収容所は解体されました。この事件は、2002年12月に朝鮮日報によって報道され、国際社会に衝撃を与えました。

年表

1440年：穏城郡が設置される。
1441年：都護府に昇格する。
1442年：鎮が置かれる。
1895年：穏城郡に改変され、咸鏡北道に属する。
1914年4月1日：郡面併合により、咸鏡北道穏城郡に以下の6面が成立。
美浦面、永忠面、永瓦面、柔浦面、穏城面、訓戎面
1945年（光復直後）：6面
柔浦面が南陽面に改称。
永忠面の一部が永瓦面に編入。
1949年：永忠面の一部が南陽面に編入。（6面）
1952年12月：郡面里統廃合により、咸鏡北道穏城郡南陽面・穏城面・美浦面・永瓦面・永忠面および訓戎面の一部、鍾城郡鍾城面の一部地域をもって、穏城郡を設置。1邑14里が成立。
1954年10月：1邑13里
永江里が鍾城郡に編入。
穏城邑が古城里に降格。
南陽里が穏城邑に昇格。
1958年6月：1邑1労働者区12里
倉坪里が鍾城郡に編入。
古城里の一部が分立し、穏炭労働者区が発足。
1967年10月：1邑5労働者区8里
古城里が古城労働者区に昇格。
上和里が上和労働者区に昇格。
周原里が周原労働者区に昇格。
豊仁里が豊仁労働者区に昇格。
1974年5月：鍾城郡鍾城邑・潼関里・永江里・豊川里・下三峯里・倉坪里・豊渓里・東浦里・山城労働者区・三峯労働者区を編入。（1邑8労働者区15里）
鍾城邑が鍾城労働者区に降格。
1975年11月：1邑8労働者区15里
穏城邑が南陽労働者区に降格。
古城労働者区が穏城邑に昇格。
1976年2月：深清里が旺載山里に改称。（1邑8労働者区15里）
1981年10月：潼関里が江岸里に改称。（1邑8労働者区15里）
1987年10月：1邑9労働者区16里
倉坪里の一部が分立し、倉坪労働者区・甑山里が発足。
倉坪里の残部・山城労働者区の一部が合併し、雲岩里が発足。
1990年10月：月波里がトゥル峰里に改称。（1邑9労働者区16里）
1991年9月：東浦里が東浦労働者区に昇格。（1邑10労働者区15里）

交通

鉄道
咸北線：三峰駅 - 鍾城駅 - 江岸里駅 - 水口浦駅 - 江陽駅 - 南陽駅 - 豊利駅 - 世仙駅 - 穏城駅 - 豊仁駅 - 黄坡駅
東浦線：鍾城駅 - 東浦駅
城坪線：江岸里駅 - 城坪駅
南陽国境線：南陽駅 - 国境駅
道路
朝鮮民主主義人民共和国国道7号
穏城釜山線

観光

トゥル峰革命史跡地：金日成が最初の国内党組織を結成した場所。
旺載山：金日成が旺載山会議を召集した史跡。
旺載山大記念碑：金日成の銅像や革命関連の群像。
旺載山革命博物館：抗日革命闘争に関する史料を展示。
南陽橋頭：中国図們市の図們口岸とを結ぶ場所。
テレビドラマ「旺載山」のロケ地。

行政区画

現在は1邑・10労働者区・15里で構成されています。

穏城面、南陽面、永瓦面、永忠面、美浦面、訓戎面

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