立志社 (政治団体)

立志社：自由民権運動の先駆け

立志社は、明治初期に自由民権運動の中核を担った高知県の政治団体です。1874年、板垣退助、片岡健吉、植木枝盛らによって設立され、社長には片岡健吉が就任しました。その名称は、サミュエル・スマイルズの『セルフ・ヘルプ』を翻訳した中村正直の『西国立志編』に由来します。

設立の背景と目的

設立のきっかけは、板垣退助らが民撰議院設立建白書を左院に提出した後、高知に帰郷したことに始まります。彼らは、旧土佐藩士族の有志を集め、人権と自由の確立を目指して立志社を設立しました。当初は、青年子弟の教育や困窮士族の救済、授産活動に重点を置き、立志学舎や商局、法律研究所などを併設しました。

活動内容

1877年1月29日に西南戦争が勃発すると、板垣や植木は相次いで帰郷し、立志社系士族と「古勤王党」を自称する士族が大阪城や備中松山城を攻略する計画を立案しました。しかし、植木は雑誌編纂に取り掛かり、民権運動による言論戦の準備に入りました。同年6月9日には、「憲法制定」「国会開設」「租税軽減」「不平等条約改正」「地方自治」などを要求する「立志社建白書」を京都行在所へ提出し、天賦人権を宣言しました。

立志社は、人民の知識の発達、気風の養成、福祉の上進、自由の進捗を目的として掲げ、人民主権・一院制議会・周到な人権保障など民主主義の理念に貫かれた立志社憲法見込案を発表するなど国会期成同盟の中心的役割を果たしました。

組織と運営

立志社は、高知市九反田の開誠館跡地に置かれ、後に京町へ移転しました。副社長には福岡精馬が就任し、社員は総勢198名で、一等発起人と二等発起人に分けられていました。『海南新誌』『土陽雑誌』『土陽新聞』を発行し、立志学舎で近代的な教育を行うなど、民権思想の普及に努めました。また、「嶽洋社」「回天社」「発動社」「修立社」「有信社」などの民権結社を次々と傘下に結成させました。

弾圧と解散

反政府運動が激化すると、政府からの弾圧が強まり、組織の規則改正を繰り返しました。1877年8月には、士族であった林有造や大江卓が西南戦争に乗じて大阪鎮台を攻撃する計画を立案していたことが発覚し、関連資金を提供した社長の片岡を含む複数の幹部が拘束される立志社の獄が発生しました。そして、1883年3月20日に社員協議の上で解散し、社屋を「後楽館」と命名して海南自由党本部としました。

立志社の活動は、自由民権運動の初期において重要な役割を果たし、その思想と行動は、後の日本の民主化運動に大きな影響を与えました。

参考文献

宇田友猪，和田三郎『自由党史 上巻』五車楼、1910年。 

関連項目

立志社の獄

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