立石清重

立石清重（たていし せいじゅう）

概要

立石清重は、1829年（文政12年）に信濃国（現在の長野県）松本で生まれ、1894年（明治27年）に亡くなった、幕末から明治時代にかけて活躍した大工棟梁であり、建築家です。彼は、伝統的な大工技術に加え、西洋建築の要素を取り入れた擬洋風建築を手がけ、その才能を発揮しました。特に、現在国宝に指定されている旧開智学校校舎の建築は、彼の代表作として知られています。

生涯

1829年（文政12年）、立石清重は、松本城下で大工棟梁の息子として誕生しました。幼い頃から建築に親しみ、自身も大工棟梁として頭角を現しました。明治時代に入ると、西洋の建築技術が導入され始め、彼はそれらの要素を積極的に取り入れ、独自の建築スタイルを確立しました。

1876年（明治9年）、筑摩県権令の永山盛輝の命を受け、松本本町に開智学校校舎を建設しました。この校舎は、当時最先端の教育施設として、また、擬洋風建築の代表作として、広く知られるようになりました。開智学校校舎は、開成学校や東京医学校などを参考に、藤村式建築を取り入れた擬洋風建築で、その美しいデザインと堅牢な構造は、多くの人々を魅了しました。この建物は、1961年（昭和36年）に重要文化財に指定され、さらに2019年（令和元年）には国宝に指定されています。現在では「旧開智学校校舎」として、その歴史的価値が広く認められています。

主な作品

立石清重は、開智学校校舎の他にも、多くの建築物を手がけました。以下に主な作品を挙げます。

開智学校校舎：現在の旧開智学校校舎。国宝。彼の代表作であり、日本の近代建築を語る上で欠かせない建築物です。
洗馬学校校舎：現存は不明ですが、地域教育に貢献しました。
松本裁判所庁舎：明治11年に建てられた初代の裁判所庁舎ですが、現存していません。現在の旧松本区裁判所庁舎は、明治41年に司法省によって建てられたもので、立石清重の設計ではありません。旧松本区裁判所は、長野地方裁判所松本支部や松本簡易裁判所としても使用されました。
大町裁判所庁舎：現存は不明です。
長野師範学校松本支校校舎：現存は不明です。
旧制東筑摩中学校2代目校舎：現在の長野県松本深志高等学校の前身。現存は不明です。
東筑摩高等小学校？代目校舎：現存は不明です。
長野県議会議事堂：1887年（明治22年）に完成しましたが、翌日に失火により全焼しました。立石清重は、その火災を汽車の車窓から目撃したと伝えられています。

建築家としての特徴

立石清重は、伝統的な大工技術と西洋建築の様式を融合させ、独自の建築美を追求しました。彼の作品は、細部にまでこだわり、装飾的な要素と機能性を兼ね備えているのが特徴です。開智学校校舎に見られるように、彼は、当時最先端の技術とデザインを積極的に取り入れ、日本の近代建築の発展に大きく貢献しました。

評価

立石清重は、日本の近代建築史において、重要な人物の一人として評価されています。彼が手がけた建築物は、現在もその歴史的価値と建築美を保ち、多くの人々を魅了しています。特に、旧開智学校校舎は、日本を代表する擬洋風建築として、その名を後世に伝えています。

参考文献

藤森照信 『日本の近代建築』 岩波書店
村松貞次郎 『日本近代建築の歴史』 日本放送出版協会

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