竜骨突起

竜骨突起について

竜骨突起（りゅうこつとっき）、または胸骨稜（きょうこつりょう）とは、主に翼を持つ鳥類に見られる独自の構造を持つ骨です。この突起は、棒状の骨ではなく、鳥の胸骨の中心に縦に位置しています。竜骨突起は、飛翔に必要な筋肉である浅胸筋（大胸筋）や深胸筋が付着する場所でもあり、鳥類の飛翔能力を支える重要な役割を担っています。

進化の過程

この竜骨突起は、飛翔性脊椎動物としての生態的地位を早くから確立していた爬虫類、特に翼竜にも見られます。これにより、鳥類の竜骨突起は翼竜との収斂進化によって形成されたと考えられています。しかし、同じく飛翔性脊椎動物である哺乳類の翼手目にはこの突起は存在せず、大きな鎖骨や肩甲骨がその筋肉の支持を担っています。

歴史的な視点で見ると、後期ジュラ紀の「始祖鳥」として知られるアーケオプテリクスの胸骨には、竜骨突起が発達していないことが分かっており、このことは高度な飛翔能力を持っていなかったことを示唆しています。一方で、真鳥類やエナンティオルニス類を含む鳥胸類は発達した竜骨突起を特徴とし、これが共通の派生形質とされています。

ただし、真鳥形類の中には二次的に飛翔能力を失ったことで竜骨突起が退化した種もあります。その代表例が、後期白亜紀にパタゴニアに生息していたパタゴプテリクスです。このような進化の過程を経て、より派生的な系統群としてヘスペロルニス類、イクチオルニス類、新鳥類を含むオルニトゥラエ類が形成されています。中でもイクチオルニス類と新鳥類は、発達した竜骨突起を持つことから胸峰類にまとめられています。しかしヘスペロルニス類は、後肢の推進を通じて潜水鳥類として進化しており、竜骨突起を持たず平らな胸骨を特徴としています。

また、飛べない鳥であるダチョウやエミューといった平胸類は、発達した竜骨突起を持たないのが一般的ですが、ダチョウに近縁なシギダチョウは小さな翼を持ち、竜骨突起を持っています。さらに、翼がヒレのようになったペンギンやほぼ退化した状態となっているドードーにおいても、発達した竜骨突起が確認されました（ドードーは現在絶滅している種です）。

語源と関連性

「竜骨」という名前は、船の底を縦に支える「竜骨」に由来しています。この竜骨は、木造船などの船体内で、船首から船尾までを貫通する弓状の太い部材を指します。興味深いことに、英語では船の竜骨も鳥の竜骨突起も同じ「keel」と呼ばれています。鳥の竜骨に関しては、特に「keel bone」と呼ばれることが多いです。

まとめ

竜骨突起は、鳥類の進化と飛翔能力の理解に欠かせない重要な構造であることがわかります。その発達の過程や関連する種の進化を通じて、鳥類の生態的多様性が深く理解できるでしょう。

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