竹中重義

竹中重義（たけなか しげよし）

江戸時代初期に豊後国府内藩の第二代藩主を務めた大名です。初代藩主であった竹中重利の長男として生まれました。父の重利は戦国時代の智将として知られる竹中重治（半兵衛）の従兄弟にあたり、さらに母は重治の妹という、竹中氏ゆかりの血筋に連なる人物でした。

府内藩主時代

元和元年（1615年）、父・重利の死去に伴い家督を相続し、府内藩主となりました。藩政を担う傍ら、江戸幕府によって配流された松平忠直といった人物を受け入れるなど、幕府の命に応じた役割も果たしています。

長崎奉行への抜擢

寛永6年（1629年）7月27日、水野守信の後任として江戸幕府の長崎奉行に任命されました。この抜擢には、当時老中であった土井利勝の強い推挙があったとされています。当時の長崎奉行は、通常、幕府の3000石級の旗本から選ばれるのが慣例であり、重義のような万石以上の大名クラスが任ぜられるのは極めて異例のことでした。幕末に至るまで、長崎奉行に万石以上の大名が就任した例は、重義を含めてわずか二名しかありませんでした。

苛烈なキリシタン弾圧

長崎奉行としての重義は、当時の幕府によるキリシタン禁制を徹底的に推し進めました。彼の在任中には、キリシタンに対する壮絶な弾圧が行われ、多くの信徒が殉教や棄教に追い込まれる原因となった「穴吊り」をはじめとする、様々な過酷な拷問方法が考案されたと言われています。さらに、肥前島原藩主であった松倉重政の勧めを受け、温泉地として知られる雲仙地獄におけるキリシタンへの拷問を開始し、ここでも数多くの殉教者を出しました。寛永8年（1631年）には、信仰の有無を確認するための「絵踏み」（踏み絵）が、雲仙で初めて行われたという記録も残されています。

不正発覚と悲劇的な結末

寛永9年（1632年）、大御所であった徳川秀忠が死去し、第三代将軍・徳川家光が幕府の権力を完全に掌握しました。この時期に最初の鎖国令が発出されるなど、幕府の対外政策が大きく転換する中で、重義には密貿易など職務上の不正行為があったとの疑惑が持ち上がりました。寛永6年（1629年）10月に平戸のオランダ商館長によって書かれた手紙の中には、重義が幕府にしか発行が許されない朱印状を勝手に発行し、東南アジアとの密貿易に関与していたと記されています。

幕府による調査の結果、寛永10年（1633年）2月、重義は長崎奉行職を罷免され、切腹を命じられるという厳しい処分が下されました。そして翌寛永11年（1634年）2月22日、重義は嫡子である源三郎と共に、江戸浅草の海禅寺で切腹しました。検死役を務めたのは、かつて長崎奉行を務め、当時は大目付であった水野守信でした。この出来事により、竹中氏の府内藩は改易、すなわち取り潰しとなり、その家系は絶えることとなりました。重義の一族も隠岐へと流罪に処されています。

失脚を巡る諸説

重義の不正がどのようにして発覚したかについては、複数の説が伝えられています。史料の一つである『通航一覧』によれば、堺の商人である平野屋三郎右衛門が、自身の妾を重義に奪われた上に追放された恨みから、江戸の町奉行に重義を訴え、その際に重義の不正の数々を告発したとされています。幕府が取り調べた結果、その訴えに間違いはないと判断され、重義は処罰されたと記されています。一方、『バタヴィヤ城日誌』では、重義を告発したのは長崎代官であった末次平蔵とその他数名の長崎町民であり、竹中采女正（重義のこと）が唐人（中国人）の貨物を着服したり、自ら禁制である海外貿易に手を染めているといった訴えであったとしています。

関連作品

竹中重義が登場する作品としては、映画『黒田騒動』（1956年、演：大友柳太朗）、山田風太郎の小説『踏絵の軍師』（1971年）、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』（2014年、演：広田亮平）などがあります。

もう一度検索