笑福亭松鶴 (7代目)

七代目笑福亭松鶴：夭逝の天才が遺したもの

七代目笑福亭松鶴（しょうふくてい しょかく、1952年2月19日-1996年9月22日）。その名は、上方落語史に燦然と輝く、一人の天才落語家の名を永遠に刻み込むこととなりました。1996年、わずか44歳という若さでこの世を去った彼の生涯は、輝かしい才能と、数々のドラマに彩られたものでした。

学業優秀から落語家への道

大阪市西成区に生まれた松鶴は、幼少期から学業成績優秀でした。しかし、父親の「手に職が必要だ」という考えから、大阪市立都島工業高等学校に進学します。卒業後、キリンビールに就職しますが、まもなく落語家への道を志すことに。

1970年、6代目笑福亭松鶴に入門。弟子入りを決意したきっかけは、師匠候補の中で「一番怖そうだった」からという、彼らしいエピソードも残されています。入門にあたっては、師匠への弟子入りを願う往復ハガキを送付するなど、独特のやり方を選択。師匠からの返事は「即答できません。…休日に一度来なさい」というものでした。

道頓堀角座の楽屋を訪れた彼に、食事中の師匠は焼き鯖を指さし「この飯食うまでにな、三年はかかるぞ」と諭します。その後、父親の反対を乗り越え、叔父の協力を得て入門が決定しました。

花の四十五年組と活躍

1972年からは、桂米之助が主宰した「岩田寄席」に参加。同期の桂べかこ、桂春若、桂米輔、桂米太郎らと共に「花の四十五年組」と呼ばれ、研鑽を積んでいきます。1973年には新花月で正式な初舞台を踏むと、1975年には結婚。着実にキャリアを積み重ねていきました。

1988年には、個人で「松葉と松葉の会」を開催、1992年には初の独演会を開催するなど、活動を積極的に展開。1993年には関西テレビの番組『やる気タイム・10』（のちの『痛快!エブリデイ』）で桂べかこ（後の桂南光）と共演。人気司会者として知名度を飛躍的に高めました。

7代目襲名と悲劇

師匠である6代目松鶴の死後、7代目襲名問題が浮上します。様々な思惑が交錯する中、松鶴一門の紛糾を経て、松葉が7代目松鶴を襲名することが決定。しかし、襲名決定後まもなく、病気に見舞われます。1995年末には高座に上がることも困難となり、1996年9月22日、道頓堀中座での襲名披露公演を目前に、右頚部鰓性がんのため死去。44歳という若さでその生涯を終えました。

彼の死は、上方落語界に衝撃を与えました。没後、7代目松鶴の名跡を追贈されるという異例の事態となりました。襲名披露公演は、追善興行として行われました。

人柄と弟子

松鶴は、古典落語に情熱を注ぎ込み、真面目な姿勢と穏やかな人柄で、師匠や同僚から厚い信頼を得ていました。笑福亭鶴瓶とは特に親しく、師匠が鶴瓶を叱る横で「松っちゃん、お父さんとお呼び」と話すなど、師弟関係を超えた温かいエピソードも残っています。

唯一の弟子であった笑福亭若松は、松鶴の看病中にうつ病を患い廃業。しかし、2014年には追善公演で高座に上がり、師匠の遺志を継ぐ姿を見せました。

7代目襲名騒動

7代目松鶴襲名問題については、松竹芸能における様々な計画や、6代目松鶴の遺言、そして一門の意見の相違などが複雑に絡み合っていました。笑福亭仁鶴を7代目とする構想から、松葉への決定に至るまでの経緯は、上方落語界の権力闘争や人間関係の複雑さを改めて見せている出来事でした。

まとめ

七代目笑福亭松鶴の短い生涯は、落語への情熱、そして数々の困難や葛藤に満ちたものでした。しかし、彼の残した作品や、人柄は、今もなお多くの人々の心に深く刻まれています。彼の存在は、上方落語界にとってかけがえのないものだったと言えるでしょう。彼の早すぎる死は、多くの人の胸に深い悲しみと、そして大きな損失として残りました。彼の才能と人柄は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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