笠置ダム

笠置ダムは、木曽川の中流、岐阜県の瑞浪市大湫町と恵那市飯地町の境界に位置しています。このダムは、関西電力が管理する発電専用の施設であり、直結する笠置発電所に水を供給し、最大で4万1700キロワットの電気を生み出す役割を担っています。建設が完了したのは1936年（昭和11年）のことです。

ダムの構造

笠置ダムは、木曽川の流れを横断するように築かれました。下流には丸山ダム、上流には大井ダムがあります。ダムの形式は、自身の重さで水圧を支える重力式コンクリートダムです。堤高は基礎岩盤から40.8メートル、頂上部の長さ（堤頂長）は154.9メートル、そして堤体の体積は11万7000立方メートルに及びます。

ダムの上部には、幅8.6メートル、高さ7.8メートルのテンターゲート（ラジアルゲート）が14門並べられています。また、ダムの右端には、水面に浮かぶゴミなどを流下させるためのセクターゲートが1門設けられています。さらに、ダムの両端と中央の合計3か所には、堆積した土砂を排出するための排砂口が設置されています。

ダムによって形成される調整池の貯水量は、全体の容量として1412万900立方メートルを誇ります。このうち、発電に利用可能な有効貯水量は、満水位である標高211.30メートルから7.06メートルの範囲内で、647万5100立方メートルとなっています（これらの数値は2008年3月末時点のものです）。この調整池の湛水面積は1.1平方キロメートルに達します（同左）。

笠置発電所

ダムに併設されている関西電力笠置発電所は、ダムの右岸に位置しています。これはダム式発電所として運用されており、最大で毎秒165.83立方メートルの水を使用し、有効落差30.38メートルを利用して、最大4万1700キロワットの出力で稼働しています。ダム右岸に設置された3つの取水口から取り入れられた水は、水門の背部にある上部水槽へと送られ、そこから繋がる3条の水圧鉄管を通じて、3台の水車発電機を動かして発電を行います。発電所の建物は鉄筋コンクリート構造で、地上3階建てとなっています。

水車には、縦軸・単輪単流渦巻型のフランシス水車（出力2万馬力）が採用されており、発電機は容量1万5000キロボルトアンペアのものが設置されています。敷地が限られているため、屋外変圧器は発電所の屋根上、水圧鉄管の上、放水路の上という3か所に分けて配置されています。これらの主要な機器はすべて日立製作所によって製造されたものです。

建設と歴史

笠置ダムと笠置発電所は、大正時代から昭和初期にかけての大手電力会社である大同電力によって手がけられました。大同電力が木曽川における水利権を取得したのは、前身である木曽電気興業の時代、1920年（大正9年）3月のことです。「笠置」地点は、この時に許可を得た5つの地点のうちの一つでした。当初の計画ではダムを設けない水路式の発電所でしたが、上流に完成した大井ダムとの運用連携を考慮し、ダムを伴う方式へと計画が変更され、1928年（昭和3年）10月にその変更許可を得ました。

実際の建設工事が始まったのは1934年（昭和9年）11月です。これは、大同電力にとっては1926年（大正15年）の落合発電所完成以来となる新規開発工事でした。工事期間中、度重なる洪水に見舞われ、ダムの仮締切設備が流されたり（1935年冬）、放水路の仮締切が破損し発電所の基礎が浸水したり（同年夏）するなど、困難に直面しました。しかし、昼夜を問わない作業の結果、当初の予定よりも早く1936年（昭和11年）11月に竣工し、同年11月27日には運転が開始されました。笠置発電所の建設に合わせて、大阪府八尾市に至る長距離送電線「大阪第二送電線」も発電所まで延伸されました。

完成後の変遷

発電所が完成した当初の最大出力は3万5500キロワットでした。しかし、1938年（昭和13年）11月には使用水量を増加させる許可が得られ、これに伴い出力も4万500キロワットへと引き上げられました。

完成から約2年半後の1939年（昭和14年）4月1日、電力国家管理体制の下、国策会社である日本発送電が設立されました。これにより、大同電力の発電設備は日本発送電に引き継がれることとなり、笠置発電所もその対象に含まれ、同日をもって日本発送電の所有となりました。

太平洋戦争後の1951年（昭和26年）5月1日に実施された電気事業の再編成において、笠置発電所は、木曽川沿いの他の発電所と同様に、供給区域外でありながら関西電力に引き継がれました。これは、発電された電力の主な消費地に関係会社を帰属させるという「潮流主義」の原則に基づいたものです。

関西電力に引き継がれた後、笠置発電所は建設当初の有効落差29.48メートルから、1957年（昭和32年）11月22日付で30.38メートルに変更されました。これにより、発電所の出力も1200キロワット増加し、現在の最大出力である4万1700キロワットとなりました。以降、発電所出力に変更はありませんでした。

今後の計画

2019年（令和元年）8月29日、関西電力は、下流で進められている国土交通省による丸山ダムの改修事業（新丸山ダム建設）に伴う笠置発電所の更新工事について発表しました。新丸山ダムによって水位が上昇し、笠置発電所の一部が水没する影響を回避するため、水路構造物の補強や防水壁の設置、さらには水車・発電機の更新といった改修工事が行われています。この大規模な改修により、発電所の使用水量は現在の毎秒165.83立方メートルから毎秒261.0立方メートルへと大幅に増加し、発電所出力も最大で6万9200キロワットとなる見込みです。この工事は2019年（令和元年）9月に始まり、2025年（令和7年）5月に完了する予定です。

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