笠置山の戦い

笠置山の戦い（1331年）

笠置山の戦いは、鎌倉時代末期の元弘元年（1331年）9月に、後醍醐天皇が鎌倉幕府に対して起こした兵乱です。舞台となったのは、山城国相楽郡笠置山（現在の京都府相楽郡笠置町）。この戦いは、鎌倉幕府の滅亡、そして南北朝時代へと繋がる重要な転換点となりました。

背景：皇位継承問題と後醍醐天皇の決意

鎌倉時代後期、皇位継承を巡り、持明院統と大覚寺統の間で対立が激化していました。文保元年（1317年）には、幕府の調停により両統が交互に皇位を継承することで合意（文保の和談）。翌年、大覚寺統の後醍醐天皇が即位します。しかし、後醍醐天皇は自身の直系の子孫に皇位を継承させることを望み、そのためには幕府の打倒が必要不可欠だと考えるようになります。正中元年（1324年）には、天皇の討幕計画が発覚し、側近が処罰される事件（正中の変）も起こりました。

戦いの経過：笠置山での攻防

後醍醐天皇は再び討幕を計画しますが、元徳3年（1331年）に計画が露見。5月には側近が幕府に捕縛されます。8月には御所が包囲され、天皇は窮地に立たされます。8月24日、後醍醐天皇は京を脱出し、笠置山へと向かいます。笠置山で兵を集め、幕府に対抗しようとします。

天皇挙兵の報を受けた幕府は、大仏貞直・金沢貞冬を大将とする軍勢を笠置山へ派遣。9月1日、宇治に75,000もの兵を集結させ、翌日には笠置山を包囲し攻撃を開始します。対する天皇側の兵は3,000余と圧倒的に不利な状況でしたが、笠置山の地形が天然の要害となっていたため、幕府軍に対して善戦します。

しかし、9月28日の夜、幕府軍が山に放火。これにより天皇軍は総崩れとなり、笠置山は陥落します。後醍醐天皇や側近は捕らえられ、六波羅へと送られました。

戦いの影響：南北朝時代へ

笠置山陥落に先立つ9月20日、幕府は後醍醐天皇の皇太子とされていた量仁親王（後の光厳天皇）を即位させます。捕らえられた後醍醐天皇は神器を光厳天皇に譲渡し、翌年には隠岐島へ流罪となりました。笠置山の戦いで活躍した武将や天皇側近も処刑されます。

しかし、元弘3年（1333年）には後醍醐天皇が隠岐島を脱出。足利高氏（尊氏）や新田義貞らが幕府を攻撃し、ついに鎌倉幕府は滅亡します。光厳天皇は廃位され、後醍醐天皇による建武の新政が開始されます。

笠置山での霊夢：楠木正成との出会い

『太平記』によると、後醍醐天皇は笠置山で、庭に南向きに枝を伸ばした大きな木の下に官人が位順に座っているという夢を見ます。「木」に「南」と書くと「楠」になることに気付き、楠という武士を探させたところ、楠木正成という人物がいることが判明。正成を笠置山に呼び寄せたと言われています。もっとも、『増鏡』によれば、天皇側は以前から正成を頼りにしていたようです。

笠置山の戦いは、その後の歴史を大きく左右する出来事となりました。後醍醐天皇の討幕の意志、楠木正成との出会い、そして南北朝時代への突入。笠置山の戦いは、日本の歴史における重要な転換点として、記憶されるべき出来事です。

もう一度検索