第一次ホムスの戦い

第一次ホムスの戦い：モンゴルとマムルーク朝の死闘

1260年、中東の覇権を巡るモンゴル帝国とマムルーク朝の戦いは、シリアのホムスで新たな局面を迎えます。この第一次ホムスの戦い、その背景にはアイン・ジャールートの戦いの結果がありました。

アイン・ジャールートの戦いでマムルーク朝はイルハン朝に勝利し、イルハン朝はシリアから撤退を余儀なくされました。しかし、フレグ・ハン率いるイルハン朝は、ダマスカスのアイユーブ朝を滅ぼすなど、シリアへの野心を捨てていませんでした。復讐とシリア支配回復のため、イルハン朝はホムスへと侵攻を開始します。

しかし、イルハン朝の再侵攻は容易ではありませんでした。アイン・ジャールートの敗北により、イルハン朝はシリアにおける支配力を弱体化させていました。また、シリアの主要都市であるアレッポやダマスカスはマムルーク朝の支配下にありました。ホムスやハマーといった都市では、未成年のアイユーブ朝の王子たちが抵抗勢力を率いていました。

さらに、イルハン朝内部の事情も、シリア侵攻を困難にしていました。フレグ・ハンとベルケの間で勃発した内戦（ベルケ・フレグ戦争）は、イルハン朝の戦力を分散させました。シリア再征服のために派遣された軍勢は、わずか6000名に過ぎませんでした。この遠征軍は、かつてアイン・ジャールートの戦いでマムルーク軍に勝利したキト・ブカのような将軍が率いていましたが、アレッポを奪還したものの、ホムスにおいてはマムルーク朝や地元勢力の抵抗に遭い、決定的な敗北を喫します。

第一次ホムスの戦いの結果は、イルハン朝のシリア侵略作戦の失敗を意味しました。1年以上も継続して領土を占領することはできず、イルハン朝の最初のシリア侵攻作戦は終焉を迎えます。この戦いは、モンゴル帝国の西への進出を阻む大きな出来事となり、マムルーク朝による中東における勢力維持に貢献しました。

その後も、第二次、第三次ホムスの戦いなど、モンゴル帝国とマムルーク朝の間で紛争は続きますが、第一次ホムスの戦いは、その後の両勢力の関係に大きな影響を与えた重要な戦いと位置付けられています。この戦いの結果、マムルーク朝はシリアにおける支配を強化し、モンゴルの勢力拡大を阻止することに成功しました。

参考文献

Amitai-Preiss, Reuven (1995) Mongols and Mamluks: The Mamluk-Ilkhanid War, 1260–1281. Cambridge University Press, Cambridge. ISBN 978-0-521-46226-6
Nicolle, Warlords., p. 117
J. J. Saunders, The Mongol Defeat at 'Ain Jalut, in. Muslims and Mongols, (ed. by G.W.Rice), p. 69.
Waterson, James (2007) The Knights of Islam: The Wars of the Mamluks. Greenhill Books, London. ISBN 978-1-85367-734-2

もう一度検索