第1次海部内閣

第1次海部内閣（だいいちじかいふないかく）は、元文部大臣や衆議院議員であり自由民主党の総裁を務めた海部俊樹が、1989年 8月10日に第76代内閣総理大臣に就任してから1990年2月28日まで続いた内閣です。この内閣は、戦後初の昭和生まれの首相、さらに現行の憲法の下で初の中日本出身者による内閣として歴史的な意義を持っています。

背景と特記事項

海部俊樹は愛知県出身であり、彼の政権以降、中日本出身の首相は2022年現在までに羽田内閣や森内閣に限られています。第1次海部内閣は、竹下内閣がリクルート事件による政治的な混乱を受けて発足しました。そのため、リクルートと関わりの少ない政治家が優先的に閣僚として選定されました。この合意形成により、政権内の安定を図ることとなりました。

国務大臣と政務次官

内閣では、日本政府の運営に関与するさまざまな大臣や政務次官が配置されました。内閣法制局長官には工藤敦夫が就任し、内閣官房副長官は志賀節、藤本孝雄が政務職に就きました。また、内閣官房副長官として石原信雄が事務を担当しました。1990年の内閣運営を支えるために、新たな政務次官が1989年8月11日に任命されましたが、他の大臣か前内閣からの留任者でした。

以下が主要な政務次官の名称と担当職です：

- 法務政務次官 - 田辺哲夫（新任）
- 外務政務次官 - 田中直紀
- 大蔵政務次官 - 高村正彦・高木正明（新任）
- 文部政務次官 - 町村信孝
- 厚生政務次官 - 近岡理一郎
- 農林水産政務次官 - 中川昭一・大浜方栄（新任）
- 通商産業政務次官 - 甘利明・石原健太郎（新任）
- 運輸政務次官 - 森田一
- 郵政政務次官 - 月原茂皓
- 労働政務次官 - 石井道子（新任）
- 建設政務次官 – 木村守男
- 自治政務次官 - 長野祐也
- 総務政務次官 - 若林正俊
- 北海道開発政務次官 - 野沢太三（新任）
- 防衛政務次官 - 鈴木宗男
- 経済企画政務次官 - 平林鴻三
- 科学技術政務次官 - 高橋清孝（新任）
- 環境政務次官 - 宮崎秀樹（新任）
- 沖縄開発政務次官 - 関口恵造（新任）
- 国土政務次官 - 自見庄三郎

政治的再編

海部政権の初期には、多くの政治的課題が浮上しました。最初の大きな波は、内閣官房長官の山下徳夫が女性問題に関連するスキャンダルで辞任したことです。この後任には環境庁長官であった森山真弓が就任し、日本の政治史上初の女性内閣官房長官としての記録を残しました。

また、海部内閣発足時に、最大派閥である竹下派からの幹事長人事を巡り、内部で意見が分かれる場面も見られました。派閥の会長である金丸信が若い小沢一郎を推薦する一方で、竹下登は伝統的な長幼の序を重視し、梶山静六を推すなど、派閥内での調整が難航しました。結局、小沢一郎が幹事長に選ばれました。

このように、第1次海部内閣は日本の政治の中でさまざまな変革をもたらし、安定した政権運営に向けた試行錯誤の姿を見せた内閣でもあります。

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