第2ニカイア公会議

第2ニカイア公会議とは

第2ニカイア公会議は、787年に小アジアのニカイア（現在のトルコ・イズニク）で開催されたキリスト教の公会議です。正教会では「第七全地公会」とも呼ばれます。この会議は、正教会とカトリック教会の両方が有効性を認める最後の公会議であり、キリスト教の歴史において重要な転換点となりました。

会議の背景：聖像破壊運動

この公会議が開催された背景には、東ローマ帝国で起こった聖像破壊運動がありました。730年、皇帝レオーン3世は聖像崇敬を禁止する命令を発令。これは、偶像崇拝を禁じる聖書の教えに基づいたものでしたが、多くの信徒にとっては長年親しんできた聖像を否定されることは受け入れがたいものでした。

レオーン3世の政策は、広範な反対運動を引き起こしましたが、皇帝はこれを武力で鎮圧しました。754年には、聖像破壊を支持する教会会議も開かれ、この政策が追認される形となりました。次の皇帝コンスタンティノス5世も聖像破壊政策を継続し、反対者を処刑しました。しかし、民衆の聖像への信仰心は根強く、皇帝の政策だけでは変えることはできませんでした。

このような状況の中、コンスタンティノス5世の後を継いだコンスタンティノス6世の母后エイレーネーは、聖像崇敬禁止政策が人々の反発を招いていることを認識し、聖像崇敬の復活を目指しました。そして、787年に第2ニカイア公会議を開催し、聖像破壊運動に終止符を打つことを目指しました。

公会議の内容と決定

第2ニカイア公会議では、7回のセッションが開催されました。特に重要なのは、10月4日に行われた5回目のセッションです。このセッションでは、聖像破壊運動がユダヤ教徒、サラセン人（イスラム教徒）、マニ教徒の三者から生まれたものと結論づけられました。会議の結果、聖像崇敬は、聖像そのものを崇拝するのではなく、それを通して神的な原像に心を馳せる行為であると定義され、偶像崇拝とは異なることが明確にされました。この理論的根拠に基づき、聖像破壊運動は否定されました。

東西教会への影響

第2ニカイア公会議の決定は、東方教会（正教会）においては非常に重要な意味を持ちました。正教会では、この公会議を正当な公会議（全地公会）とみなし、イコン（聖像）崇敬を認めています。また、この公会議の決定を記念して、大斎の第一主日を「正教勝利の主日」として祝っています。一方、西方教会（カトリック教会）では、聖像破壊運動がほとんど行われなかったため、この公会議の影響は東方教会ほど大きくはありませんでした。しかし、カトリック教会もこの公会議の決定を受け入れています。

プロテスタントの立場

プロテスタント教会では、公会議の決定も聖書の権威に従属すると考えます。宗教改革者ジャン・カルヴァンは、『キリスト教綱要』の中で、第2ニカイア公会議を批判し、この会議を偶像崇拝を認めたものとして非難しました。カルヴァンは、神を視覚的な形で表現することは許されないとし、聖像崇敬を偶像崇拝であると断じました。改革派やバプテストなどのプロテスタント諸派も、カルヴァンの考えを踏襲し、第2ニカイア公会議の決定を認めていません。

まとめ

第2ニカイア公会議は、キリスト教の歴史において重要な出来事であり、聖像崇敬をめぐる論争に終止符を打ちました。しかし、この会議の決定は、後のプロテスタントの宗教改革において再び議論の対象となり、今日に至るまでその解釈を巡って様々な見解が存在しています。この会議は、東西教会の文化的、神学的な違いを浮き彫りにしただけでなく、その後の宗教史にも大きな影響を与えました。特に、プロテスタントの立場からは、この会議は偶像崇拝を容認したと批判され、聖書の解釈と信仰のあり方を問い続けるきっかけとなりました。この会議は、キリスト教における信仰と文化、そして解釈の多様性を考える上で、非常に重要な意味を持っています。

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