第22軍団デイオタリアナ

第22軍団デイオタリアナ：その足跡と謎

第22軍団デイオタリアナは、共和政ローマ末期に誕生し、帝政初期に姿を消した謎多き軍団です。その名は、ローマと友好的な関係にあったガラティアの王、デイオタルスに由来します。軍団の紋章は不明ですが、ガラティアにちなんだものであったと推測されています。

誕生と初期の活躍

軍団の起源は、紀元前48年頃、グナエウス・ポンペイウスを支援したデイオタルスが、小アジアに居住するケルト人部族から編成した部隊に遡ります。当初はローマの同盟軍の中でも最大規模を誇り、キケロなど後世の文献にもその名が記されています。しかし、ミトリダテス6世の息子、ファルナケスとの戦いで大敗を喫し、部隊の多くが失われました。生き残った兵士たちは、一つの軍団を構成するのがやっとの状態だったと言われています。

この苦境の中、軍団はユリウス・カエサルの下へ参じ、紀元前47年のゼラの戦いでファルナケスを破るという殊勲を立てました。

ローマ正規軍への編入とエジプト駐屯

アウグストゥスの時代になると、軍団はローマの正規軍へと編入され、「第22軍団」として登録されました。そして、第3軍団キュレナイカと共に、ニコポリスに駐屯し、属州となったエジプト、特に多民族社会であるアレクサンドリアの防衛を担いました。

紀元前26年、エジプト長官アエリウス・ガッルスがヌビアとアラビア・フェリクス（現在のイエメン）への遠征を試みましたが、失敗に終わりました。飢餓と疫病によりローマ軍は甚大な損害を受け、さらにヌビア王国の侵攻を受けるという苦境に立たされます。ローマ軍はナイル川へ出征し、新たなエジプト長官ペトロニウスの指揮下でヌビアの侵攻を阻止し、逆にヌビアを制圧しました。第22軍団もこの一連の戦闘に参加していたと考えられています。その後、ヌビアとの国境は安定しました。

パルティア戦役への参加

ネロの治世下では、第22軍団は55年から63年にかけてのパルティア戦役に参加しました。グナエウス・ドミティウス・コルブロの指揮下、第15軍団アポッロナリスがシリア属州に到着し、第3軍団ガッリカ、第5軍団マケドニカ、第10軍団フレテンシスと共にパルティアへ侵攻し、成功を収めました。

ユダヤ戦争と内乱

66年にユダヤ属州で反乱が発生すると、ローマ軍は緒戦で敗北を喫しました。ネロは67年にウェスパシアヌスを派遣し、第5軍団、第10軍団、第15軍団と共に鎮圧に当たりました。鎮圧の途中でネロが自殺し、ユリウス＝クラウディウス朝が断絶すると、4人の皇帝僭称者が現れる内乱へと突入しました。第22軍団はウェスパシアヌスを支持し、彼はローマへ上り、皇帝の地位を獲得しました。

その後と消滅

五賢帝時代のトラヤヌスの治世になって初めて、第22軍団は「デイオタリアナ」という名で公式に呼ばれるようになりました。それまでは、あくまで通称に過ぎませんでした。

第22軍団に関する最後の記録は119年のものです。145年にローマ軍の全軍団名簿が作成されましたが、そこには第22軍団の名前はありませんでした。恐らく、132年から136年にかけて起こったバル・コクバの乱で消滅したものと考えられています。

第22軍団デイオタリアナは、その誕生から消滅まで、激動の時代を駆け抜けた軍団でした。その足跡は、数々の戦場に刻まれ、歴史の闇に消えていったのです。

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