第36独立海兵旅団 (ウクライナ海兵隊)

第36独立海兵旅団：ウクライナ海兵隊の要衝

第36独立海兵旅団（ウクライナ語: 36-та окрема бригада морської піхоти）は、ウクライナ海兵隊の主要な旅団であり、その歴史は激動の連続です。創設から現在に至るまで、数々の戦闘に参加し、その過程で部隊の編成も大きく変化してきました。ここでは、その詳細な歴史と戦歴について解説します。

創設と変遷

2003年12月1日、ウクライナ海軍第32軍団隷下において、第73独立機械化大隊、第501独立機械化大隊、第406砲兵連隊（後に第406旅団砲兵群に改編）、第22独立高射ミサイル大隊を基幹として、クリミア自治共和国シンフェロポリで第36独立沿岸防衛旅団が創設されました。翌2004年3月には、第4独立海軍歩兵旅団隷下の第1独立海軍歩兵大隊が配属されました。その後、2006年10月には第406旅団砲兵群、2007年6月には第1独立海軍歩兵大隊、そして2008年3月には第501独立機械化大隊が、それぞれウクライナ海軍司令部隷下に転属しました。

ロシアによるクリミア侵攻と再編

2014年2月27日、ロシアによるクリミア侵攻が発生。この際、当時の旅団長であったセルゲイ・ストロジェンコがロシア連邦軍に寝返り、部隊は戦闘することなく降伏、クリミア半島は陥落しました。しかし、この裏切り行為にも屈せず、ウクライナ本土に退却した団員たちはウクライナ国民への忠誠を改めて誓いました。2015年7月、彼らは第1独立海軍歩兵大隊と第501独立海軍歩兵大隊を基幹として、第36独立海軍歩兵旅団としてムィコラーイウ州で再編されました。同時に、裏切り者たちを中心に、ロシア海軍黒海艦隊隷下に第126独立沿岸防衛旅団が再編されました。

2017年6月には、第1海軍歩兵大隊を基幹として第503独立海軍歩兵大隊が新たに創設されました。2019年7月7日には、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領より、名誉称号「ミハイロ・ビリンシキー」が授与されました。

ロシアのウクライナ侵攻とその後の戦い

南部・ムィコラーイウ戦線

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が開始されると、旅団司令部、旅団砲兵群、防空大隊、後方部隊は南部ムィコラーイウ州ムィコラーイウに配備され、4月にはロシア軍を撃退する事に成功しました。

東部・マリウポリ戦線

一方、第503独立海軍歩兵大隊は、東部ドネツィク州ヴォルノヴァーハに配備され、第53独立機械化旅団を救援しましたが、パベル・スビトフ大隊長が戦死し、3月中旬にはヴォルノヴァーハが陥落しました。また、旅団の大部分は南東部の要衝であるマリウポリ地区に配備されました。2月26日には、第1独立海軍歩兵大隊が防御していたフヌートヴェの防衛線が突破され、マリウポリ郊外に撤退を余儀なくされました。ロシア軍の猛攻を数週間食い止めましたが、戦車大隊が壊滅するなど甚大な損害を受け、3月にはマリウポリ市内まで撤退し、イリイチ製鉄所を陣地としました。

4月4日には、イリイチ製鉄所の北部を防御していた第503独立海軍歩兵大隊の兵士267名が投降したとロシア側から発表されましたが、これは誤報であり、実際には第501独立海軍歩兵大隊の兵士であったことが判明しました。4月10日、部隊に撤退命令が出され、76人の兵士がマリウポリからの脱出を試みましたが、前線のウクライナ軍陣地に無事に辿り着けたのはわずか7人でした。

4月11日から12日にかけて、イリイチ製鉄所からアゾフスタリ製鉄所へ移動する際に、ウォロディミル・バラニュク旅団長を含む50名が戦死、42名が投降したとロシア側から発表されました。さらに、4月13日にはイリイチ製鉄所に留まっていた100名以上の負傷兵を含む1,026名が投降し、イリイチ製鉄所の陣地は失われました。

しかし、4月14日には、アゾフ連隊と合流し、アゾフスタリ製鉄所を陣地として、マリウポリの防衛任務を継続することを宣言しました。4月20日には、市内南西部の港湾地区で戦闘していた第12特務旅団や国境警備隊、警察官など500名と合流しましたが、港湾地区の陣地も失いました。5月16日、ロシア国防省がアゾフスタリ製鉄所の負傷兵避難に合意したと発表し、ウクライナ軍参謀本部も「マリウポリ守備隊は司令部が命じた全ての任務を完遂した」と発表、マリウポリ守備隊に撤退を命令しました。この撤退により、53名の負傷兵を含む、260名以上のウクライナ兵が製鉄所から避難しましたが、投降した捕虜扱いでロシア軍の支配地域に移送されました。

マリウポリの戦いで1,000人以上の死傷者を出し、部隊が壊滅的な打撃を受けたため、その後、NATO加盟国の退役軍人や退役警官の新兵訓練を受けた動員兵で再編されました。

南部・ヘルソン戦線

2022年6月、旅団砲兵群は南部ヘルソン州ベリスラウ地区に再配置され、友軍を火力支援しました。8月には全隊が再配置され攻勢を開始し、11月にはヘルソンを解放し、ロシア軍はドニエプル川西岸から撤退しました。

東部・バフムート戦線

2022年10月、第1独立海軍歩兵大隊が激戦地の東部ドネツィク州バフムート地区に再配置されました。

東部・南ドネツク戦線

2022年11月、東部ドネツィク州ポクロウシク地区に再配置され、アウディーイウカ方面に展開しました。2023年5月23日、ウクライナ海軍からの独立により創設されたウクライナ海兵隊に編入されました。2023年7月には、東部ドネツィク州ヴォルノヴァーハ地区ヴェリカ・ノヴォシルカ方面で攻勢を開始しました。

南部・ドニエプル川戦線

2023年10月には、南部ヘルソン州ベリスラウ地区に再配置され、渡河作戦を開始し、第501独立海兵大隊がドニエプル川東岸のクリンキに上陸しました。

北東部・ハルキウ戦線

2024年5月、ロシアと国境を接する北東部ハルキウ州チュフイウ地区に再配置され、第501独立海兵大隊と第2海兵大隊が友軍の救援のためヴォウチャンシク方面に展開しました。

ロシア・クルスク戦線

2024年8月には、第501独立海兵大隊がロシア・クルスク州に再配置され、スジャ方面に展開しました。

編制

2017年時点での第36独立沿岸防衛旅団の編制は以下の通りです。

旅団司令部（シンフェロポリ）
第73独立機械化大隊
第84独立機械化大隊
第501独立機械化大隊
第1独立海軍歩兵大隊
第406旅団砲兵群
第22独立高射ミサイル大隊
第29独立整備大隊
第809独立補給大隊

出身者

ヴァディム・スハレフスキー
ドミトロ・デリアティツキー

脚注

詳細は出典をご確認ください。

外部リンク

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部隊の戦死者リスト
ウクライナ・メモリアル
* Ukrainian Military Pages

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