第7回十字軍

第7回十字軍：聖王ルイ9世の悲劇

第7回十字軍（1248年 - 1254年）は、フランス王ルイ9世が主導した十字軍です。敬虔なクリスチャンとして知られるルイ9世は、エルサレム奪還を目指し、当時アイユーブ朝が支配するエジプトへの攻撃を試みましたが、結果として大敗を喫し、自身も捕虜となるという悲劇的な結末を迎えました。

十字軍の背景

1244年、エルサレムはアイユーブ朝に雇われたホラズム兵によって再び陥落しました。これは、1187年の陥落に比べると西欧の反応は鈍く、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世やイングランド王ヘンリー3世も十字軍への関心を示しませんでした。西欧社会全体の宗教的情熱が薄れつつあり、十字軍国家もイスラム勢力との関係悪化を恐れていました。

しかし、フランス王ルイ9世はエルサレム奪還に強い意欲を持っていました。彼は周囲の反対を押し切り、十字軍を組織することを決意しました。

十字軍の展開

ルイ9世は、弟たちを含む約2万の軍勢を率いてキプロスに到着しました。そこで、十字軍の目的地について協議が行われました。ラテン帝国からはニケーア帝国の攻撃が、アンティオキア公やテンプル騎士団からはシリア攻撃が提案されましたが、ルイ9世はエジプトを占領することがエルサレム維持に不可欠だと判断し、1249年6月にエジプトに上陸、ダミエッタを占領しました。

しかし、ナイル川の氾濫により、十字軍は6ヶ月間足止めを余儀なくされました。ダミエッタ占領後、アレクサンドリアを次の目標とする意見が出ましたが、ルイ9世は弟ロベール伯のカイロ攻撃案を採用し、カイロへの進軍を開始しました。

当時、アイユーブ朝スルタンのサーリフは病床にあり、ルイ側に休戦を打診しましたが、ルイはこれを拒否しました。1250年2月、十字軍はマンスーラに侵入しましたが、マムルーク軍によって壊滅的な打撃を受けました（マンスーラの戦い）。さらに、サーリフの息子トゥーラーン・シャーが十字軍の補給路を断ったため、十字軍は食料不足と疫病に苦しむことになりました。

ルイ9世は停戦を申し入れましたが、アイユーブ朝は拒否。最終的に、ルイ9世自身も捕虜となりました。

捕虜、そして帰還

捕虜の総数は1万人を超えたと言われています。解放交渉の途中でエジプトではクーデターが発生し、アイユーブ朝が倒れてマムルーク朝が成立しました。マムルーク朝との交渉の結果、ルイ9世はダミエッタなどの占領地を放棄し、莫大な身代金を支払うことで解放され、アッコンへ向かいました。

解放されたのは捕虜の一部で、残りはイスラム教に改宗しました。ルイ9世はアッコンを拠点にマムルーク朝と同盟しシリアへの勢力拡大を図りましたが、成果は得られず、母ブランシュの死去の知らせを受け、フランスへ帰国しました。

その後もルイ9世はエルサレム奪還を諦めず、1270年に第8回十字軍を率いることになります。

十字軍の結果と影響

ルイ9世の大敗はキリスト教世界の威信を大きく低下させました。また、十字軍国家を守るべき戦力が大幅に減少したことで、マムルーク朝が勢力を拡大し、十字軍国家への攻勢を強めました。このことが、1291年のアッコン陥落、ひいては十字軍国家滅亡の引き金となりました。

第7回十字軍は、聖王ルイ9世の信仰心と勇気が裏目に出た悲劇的な遠征として、歴史に刻まれています。

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