第9回NHK紅白歌合戦

第9回NHK紅白歌合戦

概要

1958年12月31日に新宿コマ劇場で開催された第9回NHK紅白歌合戦は、21時10分から23時35分まで生放送で放送されました。本イベントは、出場者や演奏、審査員の選考においても当時の風俗を反映しています。

出演者

司会者

紅組の司会は女優の黒柳徹子、白組は高橋圭三が担当し、総合司会は石井鐘三郎が務めました。黒柳は当時NHKの専属女優であり、初めて司会を担当しました。番組側は当初、楠トシエを紅組司会に起用する予定でしたが、彼女が歌手として出場を希望したため辞退。その結果、説得を受けた黒柳が最後に引き受けることとなりました。黒柳はその後、5回にわたり司会を務めることとなります。

出場歌手

出場歌手には、初出場や返り咲きのアーティストが含まれています。特筆すべきは、ダークダックスの初出場で、グループの参加が許可されたことにより、紅白歌合戦の形式に新たな風を吹き込みました。出場者の選考方針として、さまざまなジャンルから代表歌手を一人以上は選ぶという方針があったため、ラテン、シャンソン、タンゴ、ジャズなど多岐にわたる歌手が出場しました。

選考を巡って

前回の紅白歌合戦からの不選出者には、紅組から暁テル子や池真理子などが含まれ、白組からは青木光一や高英男などが外れました。これによって、出場者の選出には波乱があったことが伺えます。

審査員

審査員は多数の著名人で構成されており、吉川義雄が委員長を務めました。そのほか、漫画家の横山泰三や映画監督の稲垣浩、女優の杉村春子など、さまざまなジャンルの専門家が審査員に名を連ねています。

当日のステージ・エピソード

紅白歌合戦当日は、出場者が他の番組と掛け持ちで出演していた影響で、会場への移動が困難になった歌手が多数いました。新宿の会場と他局の会場が離れていたため、パトカーの先導でステージに駆け込む若手歌手もいたといいます。更に、黒柳はその瞬間にアドリブのトークで観客をつなぐなど、予期せぬ事態への対応を求められることになりました。

当日は音響設備が未熟で、円形のステージ構造もあって演奏が聞き取りづらく、演奏と歌がずれるケースが続出しました。このようなトラブルが影響し、コマ劇場が会場としてふさわしくなかったという意見も多く、結局この形式が続くことはありませんでした。

当時の応援ゲストには、高倉健が登場し、紅組の応援をしました。最終的に、紅組が7対4で勝利し、この年の紅白歌合戦は紅組にとって5回目の勝利となりました。

ラジオと映像の現存

今回の紅白歌合戦はラジオとテレビで同時放送されましたが、VTRが存在しないためテレビ映像は現存していません。しかし、ラジオ中継の音声には約5分の欠損があるものの、多くの歌手の歌唱音声は残っています。

後日譚

2010年には、当時の音声の一部がNHK-FMで紹介され、紅組の黒柳徹子はその後も紅白の思い出を語り続けているそうです。このように第9回紅白歌合戦は、単なる音楽番組を超え、視聴者や参加者の記憶に深く刻まれる出来事となりました。

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