筑波 (コルベット)

筑波（初代）

筑波は、日本海軍が保有した木造コルベットであり、その名は茨城県のシンボルである筑波山に由来します。元々はイギリス海軍のスループ「マラッカ」として建造され、後に日本海軍に購入され、「筑波」と改名されました。竣工から除籍までの艦歴は、明治初期の日本海軍の発展と深く関わっています。

概要

「マラッカ」は、イギリス海軍がビルマ警備のために建造したスクリュー付き木造スループでした。1851年にムラルメン（モーラミャイン）またはボンベイで建造され、1862年にコルベットとして機関換装を受けました。1869年に売却された後、1871年（明治4年）に日本海軍がイギリス人から購入し、「筑波」と改名しました。1887年（明治20年）までは「筑波艦」が正式名称でした。

購入後は海軍兵学寮（後の海軍兵学校）の練習艦として運用され、1875年（明治8年）にはサンフランシスコへの遠洋航海を成功させるなど、日本の遠洋練習航海の先駆けとなりました。また、測量任務にも従事し、日本の海洋調査にも貢献しました。

艦型と機関

「マラッカ」は、世界で最初に円缶を搭載した軍艦として知られています。機関はロンドンで製造され、日本海軍が購入した際には方形煙管缶（角缶）2基を搭載していました。1876年には高円缶4基に換装され、性能向上が図られました。帆走時にはスクリューを水上に跳ね上げる機構を備えていました。

艦歴

明治4年 (1871年)
7月21日：イギリス人バーテス氏から購入。
8月19日：「マラカ艦」から「筑波艦」へ改名。
12月17日：常備艦から兵学寮稽古艦へ任務変更。

明治5年 (1872年)
5月10日：西海巡幸の警護艦に任命。
5月23日：龍驤（御召艦）と共に品川を出港。
7月9日：品川に帰着。
7月20日：艦隊から除かれ、兵学寮所轄となる。

1873年 (明治6年)
2月28日：龍驤と共に清へ派遣。
7月20日：龍驤と共に品川に帰着。
11月5日：北海道海路研究のため回航を命じられる。

1874年 (明治7年)
4月27日：艦隊から除かれ、練習艦として兵学寮所轄となる。
10月19日：川村純義大輔らが九州出張のため乗艦。

1875年 (明治8年)
1月8日：艦隊から除かれ、練習艦に指定。
10月22日：サンフランシスコ方面への練習航海を命令。
11月6日：サンフランシスコに向けて品川を出港。
12月14日：サンフランシスコに到着。
1876年
1月20日：サンフランシスコを出港。
3月14日：横浜港に帰港。日本海軍初の正式な遠洋航海。

1877年 (明治10年)
2月19日：東海鎮守府所轄の常備艦となる。
8月13日：兵学校所轄練習艦に変更。
11月30日：遠洋航海でシドニーまでの航海を命令。
1878年 (明治11年)
1月17日：横浜港を出港。
6月13日：品川に帰着。

1879年 (明治12年)
3月3日：品川を出港し、シンガポールを目指す。
6月8日：鹿児島に帰国。
6月23日：品川に帰着。
9月26日：国内巡航。

1880年 (明治13年)
2月26日：アメリカ西海岸航海が裁可。
4月29日：品川を出港。
6月9日：アメリカ・ローヤル湾に到着。
9月29日：横浜港に帰港。

1881年 (明治14年)
1月29日：横須賀港に回航、修理。
11月21日：艦の試運転で金田湾へ回航。
11月23日：漂流中の和船を救助。

1882年 (明治15年)
1月6日：横須賀造船所で修理。
1月26日：ニュージーランド航海が令達。
3月4日：品川を出港し、オーストラリアを目指す。
10月5日：品川に帰国。

1883年 (明治16年)
1月19日：機関学校生徒が実地演習のため乗組。
2月26日：品川を出港し、小笠原、那覇、鹿児島などを巡航。
9月13日：中艦隊から除かれ、東海鎮守府所轄の航海練習艦となる。

1884年
ハワイへの演習航海（実験航海）。高木兼寛の提唱により兵食を改善し、脚気予防の効果を実証。

1887年 (明治20年)
7月2日：右舷ボイラーの改造工事が完了。

日清戦争時には艦齢40年以上であったため、実戦には投入されず、軍港警備に従事しました。

その後

1898年（明治31年）3月21日に艦船類別等級が制定され、三等海防艦に類別されました。日露戦争にも従軍しましたが、1905年（明治38年）6月10日に除籍され、翌年に売却されました。

歴代艦長

歴代艦長は、相浦紀道、本山漸、伊藤雋吉、松村淳蔵、伊東祐亨、有地品之允など、多くの著名な海軍軍人が務めました。

筑波は、その艦歴を通して、日本海軍の黎明期を支え、多くの海軍軍人を育成しました。特に遠洋航海における功績は大きく、日本の海洋進出の礎を築いたと言えるでしょう。

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