筑波雪子

筑波雪子：サイレント映画のスター、波瀾万丈な生涯

筑波雪子（1906年6月10日 - 1977年6月6日または6月8日）は、日本の女優。10代で映画界に入り、サイレント映画時代に一世を風靡しました。本名は佐藤ゆき子。

生い立ちと映画界入り

1906年、東京府荏原郡入新井村（現在の大田区大森北あたり）に生まれた筑波雪子。若くして新橋の花柳界に身を置いていましたが、その美貌が認められ、帝国劇場取締役の福沢桃介の推薦を受けました。城戸四郎の熱心な勧誘により、映画女優への転身を決意し、1922年に16歳で松竹蒲田撮影所に入社しました。

サイレント映画時代のスター

入社後、サイレント映画初期の巨匠、吉野二郎監督の『三日月次郎吉』に出演し、同年12月1日に公開されました。吉野監督や島津保次郎監督の作品に次々と起用され、瞬く間に主役の座を獲得。1926年1月には、松竹の「俳優昇格式」で準幹部にまで昇進しました。

スキャンダル、独立、そして復帰

1927年、同じ撮影所の俳優であった諸口十九との恋愛関係が発覚し、松竹蒲田撮影所を退社。その後、独立プロダクション「諸口十九社」を設立し、二川文太郎監督を起用して映画を製作しましたが、興行的に失敗し解散。「諸口十九・筑波雪子一座」を結成し、同年12月に京都座に出演。しかし、諸口との関係を清算し、浅草松竹座、京都南座に出演したことが縁で松竹蒲田撮影所に戻りました。一方、諸口は以前から川田芳子と関係を持っていたことから城戸に目を付けられ、京都の他社へ移籍しました。

21歳という若さでスキャンダルを乗り越えた筑波は、その後も野村芳亭や清水宏といった監督の作品で主演を務めました。

トーキー映画への挑戦と引退

1931年には、ハリウッドスター上山草人の帰国第1作となる大作映画『愛よ人類と共にあれ』で、上山演じる主人公の妾役を演じました。

1934年、賭け麻雀事件に関与したことが報じられ、松竹下加茂撮影所に移籍。1935年には、過去の同棲相手による恐喝事件に巻き込まれるなど、スキャンダルが続きました。その後、阪東妻三郎に誘われ、阪東妻三郎プロダクションで初のトーキー映画に出演しましたが、30歳で女優を引退し、大阪の宗右衛門町で芸妓となりました。

結婚と晩年

1941年に新派の舞台で一時的に復帰し、翌年まで舞台を務めた後、実業家の寺田甚吉と結婚しました。戦後は、吾妻徳穂の「アズマカブキ」の渡米公演に参加するなど、活動を続けました。

1977年6月6日、胃がんのため日産玉川病院で死去。70歳の誕生日を迎える直前でした。「週刊新潮」誌の「墓碑銘」欄でその死が悼まれました。

筑波雪子は、その美貌と演技力でサイレント映画時代を彩ったスターであり、スキャンダルや困難を乗り越えながらも、常に新しい道を探し求めた女性でした。

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