筒井城

筒井城（つついじょう）

筒井城は、奈良県大和郡山市筒井町に位置する中世の城です。近鉄橿原線筒井駅から東北に広がる平地に築かれ、南北約400m、東西約500mの規模を誇ります。この城は、室町時代から戦国時代にかけて大和国の政治を動かした興福寺衆徒の筒井氏の居城として、歴史的に重要な役割を果たしました。

城郭の特徴

筒井城は、平地に築かれた中世の城としては比較的大きな規模を持ち、筒井の集落を囲むように配置されていました。城郭は内堀と外堀で区切られ、その内部には筒井氏一族や家臣団の屋敷が立ち並んでいました。現在、城跡は宅地や畑地として利用されていますが、堀跡が点在し、往時の姿を今に伝えています。また、城内には市場が設けられていた可能性も指摘されており、集落内の道が複雑に折れ曲がっているのは、城が築かれた当時の名残と考えられています。

歴史

筒井城の築城時期は不明ですが、文献への初出は1429年、筒井順覚が城主であった頃です。当時は「筒井館」と呼ばれていましたが、戦乱の中で次第に城郭としての機能を備えていったと考えられています。

15世紀後半には、応仁の乱や畠山氏の家督争いに巻き込まれ、筒井城を巡る激しい攻防戦が繰り広げられました。特に、畠山義就と畠山政長の争いは、大和国の国人衆を二分し、筒井城は何度も攻め落とされました。筒井氏は、これらの戦いを生き抜き、筒井順永の時代には大和武士随一の勢力を築き、「筒井党」と呼ばれる国人衆を率いるようになりました。

16世紀には、筒井氏と松永久秀との間で、大和国の支配権を巡る戦いが勃発します。筒井城は、松永久秀によって一時的に占拠されますが、筒井順慶は後に織田信長に臣従し、筒井城を回復しました。しかし、信長の「大和一国破城令」により、筒井城は廃城となり、筒井氏は郡山城へ拠点を移しました。

発掘調査と遺構

大和郡山市教育委員会による発掘調査では、筒井城の堀跡や土塁跡が確認されています。特に、16世紀中ごろに築かれた堀は、石垣を持たない城としては最大級の規模を誇るとされています。また、城の中心部からは、7世紀はじめの建物跡や4世紀の溝が見つかり、この地が古くから重要な場所であったことが示唆されています。

発掘調査では鉄砲玉も発見されており、1559年の筒井城落城時に使用されたものと推定されています。これは、松永久秀が最新兵器を用いて筒井城を攻めた可能性を示唆しています。

現在、筒井城の中心部は蓮根畑となっており、この蓮根畑が堀跡であると推定されています。地元では、かつて筒井氏が住んでいた場所であることから、現在も民家が建てられていないという伝承が残っています。また、筒井集落の北側や南東側には外堀跡が残り、菅田比売神社の東側には内堀跡の遺構が良好に残っています。

市場と鬼門

筒井城内には、北市場と南市場という字名が残っており、城内に市場が設けられていたことがわかります。また、筒井城の東北隅には水堀が多折れに屈曲しており、これは風水における鬼門を避けるための「鬼門落し」であると考えられています。

この鬼門落しは、筒井城が防御のためではなく、風水に基づいた思想によって築かれたことを示唆しています。

現在のアクセス

筒井城跡へは、近鉄橿原線筒井駅から徒歩約5分でアクセスできます。ただし、周辺に駐車場はないため、公共交通機関の利用が推奨されます。

まとめ

筒井城は、戦国時代の歴史を語る上で欠かせない、重要な城郭です。幾多の戦乱を乗り越え、大和国の歴史に大きな足跡を残しました。現在、城跡は宅地や畑地となっていますが、その痕跡は今もなお残り、訪れる人に往時の歴史を伝えています。

もう一度検索