篠澤家文書

篠澤家文書について

篠澤家文書は、長野県佐久市岩村田に所在する佐久ホテルを経営する篠澤家が所蔵する古文書群です。この文書群は、江戸時代から現代に至るまでの篠澤家の歴史、地域社会との関わりを示す貴重な資料で構成されています。

篠澤家の歴史

篠澤家は、江戸時代には遅くとも寛永年間から岩村田の名主役を歴任していました。寛文年間から元禄16年まで当地が天領だった時代、その後岩村田藩が成立してからは、名主役は割元職を兼任するようになります。篠澤家は割元・名主のほか、公事宿（郷宿）としての役割も担っていました。篠澤家が重用された理由としては、飛び抜けて高い経済力があったというよりも、陣屋元に在住していたことが大きかったと考えられています。しかし、安政6年（1859年）には、出入がもととなって解任されています。

現代において篠澤家は宿泊施設「佐久ホテル」を経営しています。以前は歴史資料の公開にはあまり積極的ではありませんでしたが、経営者の代替わりに伴い、方針を転換。インターネットを活用するなどして積極的に情報を発信し、老舗宿として同業他社との差別化を図り、歴史に関心を持つ層の集客へとつなげました。公開に踏み切った背景には災害等に起因する資料の滅失に対する危機感があるようです。

研究の進展

2011年（平成23年）から2013年（平成25年）にかけて、関西学院大学文学部教授・志村洋代表による科学研究費助成事業「近世後期、小藩領の支配構造に関する比較史研究」の一環として、篠澤家文書の大規模な調査・研究が行われました。

篠澤家文書は1,000点を超える資料から構成されていますが、これまでその一部、わずか227点が地誌『長野県史』・『佐久市志』に収録された程度でした。研究者らは5度に渡り、合計14日間の調査を実施。倉庫から取り出した資料をデジタルカメラで撮影、電子化するとともに、表計算ソフトを用いて目録を作成しました。この研究において新たに確認された資料の点数は1,382点に上ります。

研究成果

本研究の成果物としては、以下のものが挙げられます。

雑誌論文
志村洋「近世後期信州の西宮えびす社人について」『関西学院史学 39号』関西学院大学、2012年、1 - 36ページ。
志村洋「近世後期の小藩・交代寄合領の大庄屋」『関西学院史学 41号』関西学院大学、2014年、29 - 64ページ。
図書
志村洋・吉田伸之『近世の地域と中間権力』山川出版社、2011年。
志村洋『長野県佐久市岩村田 岩村田藩割元篠澤家文書目録』関西学院大学文学部日本史学研究室、2014年。

これらの研究を通じて、篠澤家文書は地域史研究における重要な資料としての価値を改めて示しました。

関連情報

信濃国
佐久郡
北佐久郡
岩村田町

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