簗田持助 (室町時代)

簗田持助とは

簗田持助（やなだ もちすけ）は、日本の室町時代後期に生きた武将であり、下総国水海城（現在の茨城県古河市）の城主を務めました。彼は関東における足利氏、特に後の古河公方となる系統に仕え、その勢力確立と拡大において重要な役割を果たした人物です。

生い立ちと青年期

持助は応永29年（1422年）、簗田満助の子として誕生しました。彼の名「持助」に含まれる「持」の字は、当時の鎌倉公方であった足利持氏から偏諱として賜ったものとされています。これは、簗田氏が早くから鎌倉公方に近い立場にあったことを示唆しています。

永享10年（1438年）に勃発した永享の乱は、鎌倉公方足利持氏と関東管領上杉憲実の対立に端を発する大規模な争乱でした。この時、父である満助は持氏に従って戦いましたが、持助は父の命を受け、当時まだ幼かった持氏の四男・永寿王丸（後の足利成氏）を鎌倉から無事に脱出させるという重大な任務を遂行します。永寿王丸を伴って、持助は父の代からの本拠地であった水海城へと退避し、持氏の敗死後も水海城で成氏を匿い、再起の時を待ちました。父満助はこの乱で持氏と共に命を落としています。

成氏への出仕と江の島合戦

永享の乱の終結から十数年を経た宝徳元年（1449年）、室町幕府によって許された永寿王丸が鎌倉公方として鎌倉に入ることを許されると、持助は早速出仕し、その補佐にあたりました。彼は成氏の側近である「奏者」として政務に関与し、宝徳2年（1450年）には成氏の指示に基づき、武蔵国品川の有力商人・鈴木道胤に対して蔵役（商工業者に課される税）を免除する内容の御教書（文書）を発給するなど、具体的な職務を遂行しました。

一方で、持助の行動が新たな争乱の火種となることもありました。成氏の命令を受けて、長年関東管領上杉氏の重臣である長尾氏が伝来的に所有していた所領を没収しようと試みたのです。これに反発した長尾景仲と太田資清は、鎌倉公方成氏の打倒を画策しました。この動きを察知した成氏が難を逃れた後、長尾氏・太田氏と成氏の間で軍事衝突が発生しました。これが「江の島合戦」であり、持助の土地政策が一因となって引き起こされた戦いでした。

古河公方の成立と享徳の乱

康正元年（1455年）、成氏が上杉氏や今川範忠らの攻撃を受けて鎌倉から追われるという事態が発生します。この窮地において、持助は再び成氏を庇護しました。彼は自らの支配地域に近い古河に軍を率いて成氏を避難させ、古河に新たな拠点を築くことに成功します。これにより、成氏は「古河公方」と称されるようになり、古河公方府が成立しました。持助は、鎌倉を追われた成氏にとって最も信頼できる家臣の一人として、この重要な局面で指導力を発揮したのです。

その後、関東地方は享徳の乱と呼ばれる半世紀にも及ぶ大乱の時代に突入します。持助は、関宿城を築いた子・成助と共に、この乱において中心的な役割を担いました。彼らは、古河公方に敵対する周辺の勢力や上杉氏との戦闘を重ね、また千葉氏の内紛にも介入するなど、戦略的に活動しました。こうした持助と成助父子の活躍により、古河公方の勢力は関東の北部から東部にかけての一帯に拡大することに成功し、その地位を確固たるものにしていきました。

晩年と終焉

長年にわたり古河公方に仕え、その基盤確立と勢力拡大に貢献した簗田持助は、文明14年（1482年）にその生涯を終えました。彼の墓所と伝えられている「寿祥塔」は、現在も茨城県古河市の安禅寺に現存しています。持助の生涯は、室町時代後期の激動の関東において、武将として主君を支え、その歴史を形作る上で果たした重要な役割を示しています。

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