糜竺

糜竺についての詳述

糜竺（び じく）は、中国の後漢末期から三国時代にかけて活躍した政治家です。字は子仲で、江蘇省連雲港市に位置する徐州東海郡の朐県出身です。彼の姉妹は劉備の妻である糜夫人、また弟は糜芳、子は糜威、孫は糜照といった家族がいました。本来の苗字は縻、あるいは靡と呼ばれていました。

生涯の概要

糜竺の家庭は代々商業に従事し、非常に裕福でした。彼の家族は多くの資産を蓄え、家中には1万人の下僕を抱えるほどでした。陶謙という人物に招かれて別駕従事という職に就きましたが、興平元年（194年）に陶謙が亡くなると、彼は劉備を徐州牧として迎え入れました。

建安元年（196年）、劉備が袁術との抗争で動き出すと、糜竺は自らの財産と下僕2千人、金銀を提供し、劉備の妻子を守るために妹を差し出しました。この支援により、劉備は再び勢力を立て直すことができました。

その後、劉備が曹操に助けを求めた際、糜竺は曹操から評価され、嬴郡太守に任じられます。しかし、劉備が曹操に対して反旗を翻すと、兄弟は共に流浪の身となりました。劉備が荊州の劉表に頼る際には、糜竺がその使者に任命され、左将軍従事中郎となります。

糜竺は益州を得た劉備によって安漢将軍に任命され、軍師の諸葛亮よりも上位に位置しました。彼は劉備に古くから仕えていた家臣たちよりも高い評価を受けており、これは彼が財力をもって劉備を支えたからと考えられています。

一方、弟の糜芳は関羽と共に荊州を任されましたが、彼の職務怠慢によって呉に内通し、荊州が侵攻される要因を作りました。結果、関羽は敗死し、糜竺はその責任を取るために自ら出頭しましたが、劉備からは兄弟の罪に連座しないと宥められます。ところが、糜竺の怒りは収まらず、病を患い1年程で亡くなったと言われています。

章武元年（221年）、劉備が皇帝に即位した際、なお生存しており、「安漢将軍糜竺」の名が上奏されるなど、その地位が認められていました。

人物像と一族

彼は温厚で誠実な性格の持ち主でしたが、他者を指導するのが得意ではありませんでした。そのため高い評価を受けていたにもかかわらず、軍を指揮したことは一度もありません。しかし弓馬に秀でており、彼の子や孫もその技術に長けていました。子の糜威は虎賁中郎将、孫の糜照は虎騎監となっています。

糜竺とその一族については、一般的には商人として低く見られることが多かったですが、彼らはただの商業豪族ではなく、文化的な学識を掻き立てる地元名族であったという見方も存在します。彼自身が州の高官に任命されていたことからも、名士や優秀な人材が彼の周りに集まっていたことは明らかです。

評価と伝説

楊戯が書いた『季漢輔臣賛』において、糜竺は高く評価されていますが、彼の弟糜芳は裏切り者として言及されています。これは糜芳が関羽を欺いたことを暗示しているとも解釈されています。

さらに、伝説的なエピソードとして『捜神記』には、天使が糜竺の家に火事が起こる前に警告を与え、彼が難を逃れたと伝えられています。また、糜竺が所有していた土地では彼が神として祀られ、住民は彼を「糜郎」と呼び、その神前に新たに嫁を取る際には見せなければならないという伝統が続いています。

このように、糜竺はただの政治家でなく、歴史や民間伝承の中で重要な位置を占める人物となりました。

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