米ソデタント

米ソデタントとは

米ソデタント（米ソ緊張緩和）とは、冷戦時代において、1960年代末から1970年代末にかけてアメリカ合衆国とソビエト連邦の間で政治的な対話が進められた期間を指します。この時期、両国は核戦争の危機を回避し、関係を改善しようと試みました。

背景

1940年代後半から始まった米ソの対立は、1958年のベルリン危機、1961年のベルリン危機、そして1962年のキューバ危機で頂点に達し、核戦争寸前の状態にまで至りました。しかし、これらの危機を経験した両国は、核戦争を回避することが共通の利益であることを認識するようになり、ヨーロッパにおけるそれぞれの勢力圏を尊重するようになりました。

また、両陣営内部でも、フランスや西ドイツの独自外交、中ソ対立の表面化など、多中心化の動きが見られ、冷戦初期とは異なる状況が生まれていました。さらに、米ソの軍事力がほぼ同等になったことも、デタントの成立を後押しする要因となりました。

デタントの概念

デタントは、大きく「米ソデタント」と「ヨーロッパデタント」に分けることができます。

米ソデタント

米ソデタントは、リチャード・ニクソン大統領とレオニード・ブレジネフ書記長の間で、軍備管理協定が締結されたことが大きな特徴です。

ヨーロッパ デタント

一方、ヨーロッパデタントでは、西ドイツのヴィリー・ブラント首相が東方政策を推進しました。また、1975年には全欧安全保障協力会議（CSCE）が開催され、ヘルシンキ宣言が採択されました。

デタントの背景

デタントの推進には、米ソ両国の内政・外政上の事情が深く関係していました。

ソ連は、農業政策の失敗や非効率な食糧流通により食糧自給が不可能となり、アメリカとの良好な関係を維持する必要に迫られていました。特に、1972年以降のソ連による穀物輸入の著しい増加は、ソ連の貿易収支を悪化させる大きな原因となりました。ソ連は、小麦や大麦などの生産量が世界一にもかかわらず、オイルショックで得た外貨を使って国際市場で大量の穀物を買い付けたため、「大穀物強盗」と呼ばれることもありました。

一方、アメリカでは、ベトナム戦争の泥沼化により膨らんだ軍事費を抑制する必要がありました。また、1969年に就任したニクソン大統領は、ベトナム戦争からの早期撤退を公約としていたため、北ベトナムを支援していたソ連との関係改善が不可欠でした。

さらに、1969年4月には、北朝鮮近海でアメリカ海軍の偵察機が撃墜され、搭乗員が死亡する事件が発生しました。この事件に対して、ニクソン政権内では戦術核兵器による報復も検討されましたが、当時デタントを最優先していたニクソン大統領は、北東アジアでの新たな戦争を避けるため、報復措置を控えました。

デタントの崩壊

1970年代後半になると、アメリカ国内でデタント政策に対する批判が高まりました。そして、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻をきっかけに、デタントは崩壊へと向かいました。しかし、ブレジネフ政権下で経済が停滞し、北米からの穀物輸入なしには国民を養えなくなっていたソ連は疲弊し、デタント初期のような米ソ間の均衡は崩れていました。ソ連にはアメリカとの軍拡競争に耐える体力はなく、1950年代から1960年代初頭のような全面戦争の危機は再来しませんでした。

1985年にゴルバチョフが書記長に就任し、ペレストロイカに代表されるソ連の建て直しを図りました。ゴルバチョフ書記長は、外交面ではアフガニスタンからの撤退など、冷戦の終結に向けた政策を採りました。最終的には、建て直しの行き詰まりによるソ連崩壊により、冷戦は終結しました。

ソ連崩壊後のロシアとアメリカの関係

1991年12月にソ連が解体し、ロシアが旧ソ連の国際的な権利を引き継ぎましたが、軍事力は低下し、国内経済も悪化しました。これにより、両国間にはかつてのような緊張関係はなくなりました。

しかし、2000年代後半に入ると、アメリカが推進する東欧MD問題や、ロシアが掲げる「強いロシア」復活に向けた資源外交などで、米ロ両国の緊張が高まりました。2008年の南オセチア紛争により、米ロ関係は悪化し、再び冷戦のような状態に陥ったとの見方も出ています。

2009年に発足したオバマ政権は、米ロ間の最大の懸案であった東欧ミサイル防衛構想の中止を決定し、両国間の緊張は大きく緩和されました。ただし、これも見方によっては、冷戦時代のデタントと同じようなものであり、アメリカの政権交代やロシアの行動次第で、再び関係が緊張する可能性もあります。

米ソデタント