粛宗 (唐)

唐の第10代皇帝 粛宗

粛宗（しゅくそう）は、唐王朝の第10代皇帝であり、激動の時代を生きた人物です。初めは嗣昇（ししょう）と名乗っていましたが、後に浚（しゅん）、璵（よ）と改名し、即位時に亨（きょう）と称しました。生母は楊氏で、楊達の玄孫娘にあたります。

生涯

玄宗皇帝の三男として生まれた粛宗は、長兄の早世と次兄の廃位という出来事を受け、皇太子の地位を継承しました。744年には「亨」と名を改めます。755年に安史の乱が勃発すると、翌年には長安を脱出し、玄宗皇帝とともに避難を余儀なくされます。しかし、馬嵬の変で楊国忠一族が粛清された後、玄宗皇帝が蜀へ逃れる一方で、粛宗は安禄山ら反乱軍に対抗するため北伐を開始します。756年、粛宗は霊武にて側近の宦官、李輔国の進言を受け皇帝に即位、年号を至徳と改めました。この即位は父である玄宗皇帝の事前の承認を得たものではありませんでしたが、事後承諾せざるを得ませんでした。これにより玄宗は上皇となります。

即位後、粛宗は郭子儀率いる軍と回紇の援軍を得て反撃を開始。757年には、異母弟の永王李璘が独断で軍を動かしたことに激怒し、討伐を命じました。しかし、討伐を命じた皇甫侁が永王を独断で殺害するという事件も起こります。同年、安禄山が息子の安慶緒によって殺害されると、郭子儀や粛宗の長男である広平王李俶らの活躍により、長安と洛陽を奪還。粛宗は長安に帰還しますが、安慶緒や史思明の残党勢力は依然として存在し、戦いは膠着状態となります。

758年、粛宗は塩の専売制を導入し財政健全化を図りますが、朝廷の実権は皇后張氏や宦官の李輔国らに握られており、自らの政治力を発揮することは困難でした。李輔国と張皇后は政争を起こし、その中で粛宗の三男である建寧王李倓が謀反の疑いをかけられ自殺に追い込まれるなど、朝廷は混乱を極めます。この頃から、粛宗は病床に伏せる事が多くなりました。

762年、玄宗皇帝が崩御したわずか13日後、粛宗も52歳でこの世を去りました。安史の乱の終結を見ることなく、その生涯を終えることになります。粛宗が宦官に擁立され、宦官を監軍に用いたことは、その後の唐王朝において、宦官が皇帝擁立に関与する慣例を生むことになります。彼の玄孫である憲宗以降、唐が滅亡するまで、敬宗を除いて、全ての皇帝の即位は宦官によって決定されました。

宗室

粛宗は多くの妃嬪と子を持ちました。

皇太子妃: 韋妃（離婚）
皇后: 張皇后（廃位）
側室: 呉氏（贈章敬皇后）
側室: 裴昭儀
側室: 段婕妤
側室: 陳婕妤
側室: 張美人
側室: 董美人
側室: 孫宮人
側室: 張宮人
側室: 王宮人
側室: 杜良娣（太子時代の側室）
側室: 鄭良媛（太子時代の側室）

主な皇子:

長男: 広平王 李俶（後の代宗）
次男: 越王 李係
三男: 恭懿太子 李倓
四男: 衛王 李佖
五男: 彭王 李僅
六男: 兗王 李僴
七男: 涇王 李侹
八男: 鄆王 李栄
九男: 襄王 李僙
十男: 杞王 李倕
十一男: 召王 李傀
十二男：興王 李佋
十三男：定王 李侗
十四男：宋王 李僖

主な皇女:

永和公主
永穆公主
和政公主
蕭国公主（寧国公主）
郯国公主
紀国公主 李淑
郜国公主
宿国公主

備考

高麗史節要には、高麗の太祖である王建の祖父、王帝建が粛宗の庶子であるという記述があります。

登場作品

粛宗は、その波乱に満ちた生涯から、多くの映像作品に登場しています。

映画:

楊貴妃 レディ・オブ・ザ・ダイナスティ（2015年、中国）演：呉超

テレビドラマ:

楊貴妃（2005年、中国）演：張静東
麗王別姫 〜花散る永遠の愛〜（2017年、中国）演：ワン・ジンソン



粛宗の治世は、安史の乱という未曾有の国難に見舞われ、その後の唐王朝の命運を大きく左右しました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた皇帝の苦悩と、その後の歴史に与えた影響を物語っています。

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