粟田諸姉

粟田諸姉の生涯

粟田諸姉（あわた の もろね）は奈良時代に活躍した女性ですが、その生涯については多くの謎に包まれています。彼女は藤原真従と結婚した後、混沌とした時代に淳仁天皇の妃となりました。彼女の位階は従五位下であり、彼女が皇后または妃としての地位を持っていた可能性が高いと考えられています。

出自とその影響

諸姉は和珥氏系の粟田朝臣出身の女性です。彼女の一族は歴史上で重要な役割を果たし、大宝律令を定めた粟田真人という著名な人物を輩出しています。彼女の名「諸姉」は、年長者を尊重する意味を込めたものとされ、当時の女性にとっては珍しいものでした。

藤原真従との結婚

諸姉は藤原仲麻呂の長男、藤原真従と結婚します。彼女の位階は、749年に正六位下から従五位下に昇格すると記録されていますが、夫の真従はその後間もなく喪失すると考えられています。真従の死後、諸姉は彼の家から離れず、仲麻呂の邸宅である田村第に居住していました。

この選択には、夫の経済力や知名度を活用し、彼女自身の地位を安定させようとする意図があったのかもしれません。また、仲麻呂は諸姉を通じて後の天皇を後援する計画を進めることになります。

大炊王との結婚

やがて、仲麻呂の仲介により、諸姉は舎人親王の子、大炊王と結婚します。これにより、仲麻呂の婚姻政策に寄与し、皇位継承において重要な役割を果たすことになりました。757年には、大炊王が道祖王の廃太子を経て立太子する際、彼は田村第から迎えられており、仲麻呂との深い関係が窺えます。

後宮での存在

淳仁天皇は、仲麻呂夫妻を自身の家族として慕い、諸姉が皇后になる可能性が高いという見方が多くありました。天皇は仲麻呂の子供を「はらから」と呼び、絆を深めていきました。しかし、時代の流れと共に諸姉の存在は薄れていき、皇后としての記録は天平宝字2年以降ほとんど残っていません。

一族の昇進と謎

彼女の一族、特に粟田奈勢麻呂は位階を次々と昇進させていきます。757年には従五位上から正五位下に昇格し、762年には従四位下にまでなります。また、粟田人成も従下位から従五位上に昇進し、家族全体の力を強化していきました。

これらの動きは、諸姉が持つ特別な地位と関連しているとも指摘されていますが、具体的な関係性は不明な点が多いです。特に、淳仁天皇の淡路配流以降、諸姉に関する記録は途絶えています。彼女自身の運命は歴史の影に埋もれていったのかもしれません。

結論

粟田諸姉の生涯は、歴史的な文脈が複雑に絡み合う中で、その姿を知ることが難しいものとなっています。彼女の存在は、奈良時代の後宮の政治や家族の力の在り方を考える上で、重要な要素の一つです。

もう一度検索