舎人親王

舎人親王：奈良時代前期を彩った皇族の生涯

舎人親王は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活躍した、天武[[天皇]]の第六皇子です。母は新田部皇女。数多くの皇子の中で最後まで生き抜き、奈良時代前期には、長屋王とともに皇族勢力の要として朝廷政治の中枢に深く関わりました。その生涯は、権力闘争や政治改革、そして文化への貢献といった、激動の時代を反映するものです。

輝かしい経歴：政治家としてのキャリア

676年、天武[[天皇]]5年に誕生した舎人親王は、幼少期から優れた才能を発揮し、順調に昇進していきます。695年（持統天皇9年）には浄広弐に叙せられ、大宝令制定後の新たな位階制度では二品に。718年（養老2年）には一品に昇叙され、翌年には元正[[天皇]]より、異母弟である新田部親王と共に皇太子・首皇子（後の聖武天皇）の補佐を命じられます。これは、皇室におけるその地位と影響力の大きさを示しています。

720年（養老4年）、舎人親王は、自ら編集を総裁した『日本書紀』を朝廷に献上しました。これは、日本の歴史を体系的にまとめた重要な史書であり、その編纂事業における舎人親王の貢献は計り知れません。同年、右大臣・藤原不比等の死後、知太政官事に就任し、太政官の長となることで、朝廷における発言権をさらに強めました。新田部親王、長屋王らと共に皇親勢力を主導するようになります。

聖武天皇の即位後も、舎人親王は政治の中枢に留まり、藤原氏との協力関係を深めていきます。藤原四子政権の成立にも影響を与えたと言われています。しかし、729年（神亀6年）に起こった長屋王の変では、新田部親王らとともに長屋王を糾問し、自害に追い込みました。この事件は、舎人親王の政治的立場と決断力を改めて示す出来事となりました。同年、藤原不比等の娘・光明子の立后の勅を宣べました。

731年（天平3年）には、高齢や病気のため政務に当たれない公卿が多くいることを憂慮し、新たな人材の登用を促します。これにより、藤原宇合・麻呂兄弟ら6名が参議に任官し、藤原四兄弟全員が議政官に加わることとなり、藤原氏の勢力拡大が加速しました。

しかし、長屋王の変後には「朝庁に参入する際に、諸司が座を譲る必要はない」という処分を受けます。これは、長屋王の変への関与、あるいは藤原氏による皇族勢力の抑制策といった解釈がなされています。735年（天平7年）、新田部親王の死後、わずか1ヶ月半で舎人親王も天然痘により亡くなりました。享年60。太政大臣の官職を贈られ、壮大な葬儀が執り行われたと伝えられています。

没後も続く影響力：淳仁天皇の父として

舎人親王の死後20年以上たった758年（天平宝字2年）、第7王子の炊王が即位し、淳仁天皇となります。翌759年（天平宝字3年）、天皇の父として「崇道尽敬皇帝」の諡号を贈られました。この諡号は、舎人親王の生涯と功績に対する朝廷の評価を示しており、彼の死後もなお、朝廷に大きな影響を与え続けたことを示唆しています。

多才な一面：歌人としての才能

政治家としての活躍だけでなく、舎人親王は優れた歌人としても知られています。『万葉集』に3首、柿本人麻呂歌集には舎人親王への献歌5首が残されています。また、歌会を催し、賞金を出すなど、文雅を愛する一面も持ち合わせていました。

謎に包まれた墓所

舎人親王の墓所は、いまだに特定されていません。『延喜諸陵式』には記載がなく、奈良県奈良市田中町にある黄金塚陵墓参考地が有力候補として考えられていましたが、発掘調査の結果、年代が合わないことが判明しました。松尾寺や伏見稲荷大社（かつての藤尾社）など、様々な伝承墓が存在しますが、確定的な証拠はありません。

舎人親王は、その政治的功績、文化への貢献、そして謎に包まれた最期まで、多くの謎を残した人物です。彼の生涯は、激動の時代を生きた皇族の姿を克明に示し、後世に多くの問いを残しています。

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