紀元前10千年紀

紀元前10千年紀：人類と地球の大変革期

紀元前10千年紀（西暦前10000年から西暦前9001年）は、人類史において画期的な転換期となりました。およそ1万1000年から1万2000年前、最終氷期の終焉と完新世の幕開けとともに、地球環境と人類社会は劇的な変化を遂げます。この時代は、中石器時代や亜旧石器時代と重なり、狩猟採集生活から農耕へと移行する重要な段階にあたります。

農業の夜明けと人類の拡散

紀元前10千年紀における最も重要な出来事の一つは、農業の誕生です。肥沃な三日月地帯（西南アジア）で、雑穀や米の栽培が始まりました。これは人類の歴史を大きく変える転換点であり、定住生活の始まり、人口増加、社会構造の変化などを引き起こす契機となりました。

世界人口は100万から1000万人と推定され、人類は南極大陸を除くすべての大陸に拡散していました。最終氷期の終わりとともに、北部地域への再植民も進みました。この時代の人々は、狩猟採集を主な生業としつつ、徐々に植物の栽培や家畜化を試みるようになります。

各地域における変化

旧世界

アジア: カスピ海周辺では洞窟居住が見られ、中東では小麦や大麦の栽培が始まりました。ギョベクリ・テペ（トルコ）では、寺院複合体の建設が進められました。日本列島では縄文時代が開始され、土器の使用や狩猟採集が盛んに行われました。
アフリカ: エチオピアやエリトリアでは、紀元前10000年頃の壁画が発見されています。
ヨーロッパ: スペイン北部やフランス南部ではアジール文化、フランスではマドレーヌ文化が栄え、ソリュトレでは馬を使った狩猟が始まりました。
ヨルダン: ワディ・フェイナン遺跡では、初期農耕民が野生植物の栽培や狩猟、家畜の移動を行っていた痕跡が見つかっています。
ペルシャ: ヤギの家畜化が進みました。
サハラ: 水牛時代が到来しました。

アメリカ大陸

北アメリカ: パレオ・インディアンが遊牧生活を送っており、フォルサム文化が発展しました。ネバダ州では、岩面彫刻が作成されました。

オーストラリア

アボリジニが狩猟採集生活を送っていました。サフル大陸のアーネム陸橋が水没し、オーストラリアとニューギニアが分離。その後、多くのアボリジニが内陸部から海岸部に移住し、漁業が盛んになりました。ブーメランが多目的に使用されるようになりました。

環境の変化と絶滅

紀元前10千年紀は、環境にも大きな変化をもたらしました。

北アメリカ: ダイアウルフ、スミロドンなど多くの巨大動物が絶滅しました。
ベーリング海: ベーリング地峡が水没し、シベリアと北アメリカが完全に分離しました。
ヨーロッパ: 氷河期終結による海面上昇や、気候変動による動物相の変化が起こりました。
世界: 氷河の融解による海面上昇は、広範囲にわたる洪水を引き起こしました。

考古学的発見

この時代には、洞窟壁画や初期の農耕の跡、初期の定住跡など、多くの重要な考古学的発見がなされています。これらの発見は、当時の社会構造や生活様式、技術水準などを解明する上で重要な手がかりとなっています。

暦法

チェザーレ・エミリアーニが提唱した人類紀元（HE）は、紀元を紀元前10000年としています。

紀元前10千年紀は、人類史と地球環境史の大きな転換点であり、現代社会につながる様々な要素が形成された重要な時代でした。今後の研究によって、この時代の理解はさらに深まるでしょう。

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