洞窟壁画

洞窟壁画とは

洞窟壁画とは、先史時代の人々が洞窟や岩壁の壁面、天井部に描いた絵の総称です。これらは現存する人類最古の絵画であり、その多くは後期旧石器時代に製作されました。これらの壁画は、当時の人々の文化や生活、信仰を現代に伝える貴重な資料となっています。

ヨーロッパにおける洞窟壁画

ヨーロッパでは、1879年にスペインのアルタミラ[[洞窟]]で初めて発見されました。当初はいたずらだと考えられていましたが、その後の研究により、高度な芸術性を持つことが明らかになりました。これらの壁画は、約6万4000年前のものから、約3万7000年前のものまで、幅広い年代にわたって描かれています。

最も古いとされる壁画は、スペインのラパシエガ洞窟、マルトラビエソ洞窟、アルタレス洞窟にあります。また、エル・カスティージョ洞窟、ショーヴェ[[洞窟]]なども有名な壁画の発見場所です。壁画の題材は、バイソン、馬、オーロックス、鹿などの大型動物が多く、他に人の手形や抽象的な模様も描かれています。これらの壁画は、赤や黄色の黄土、赤鉄鉱、二酸化マンガン、炭などを用いて描かれており、時には岩面に動物の輪郭を刻み込んだものもあります。

洞窟壁画の意味

洞窟壁画の意味については、様々な解釈があります。当初は、狩猟の成功を祈るための呪術的な意味合いを持つと考えられていました。しかし、最近では、シャーマンがトランス状態の中で描いたとする説や、洞窟に住んでいた集団の宗教的な儀式やパフォーマンスの一部であったとする説も提唱されています。ただし、物的証拠の不足や、現代の思考で古代を理解しようとすることから、どの説が正しいかは断定できません。

その他の地域における洞窟壁画

ヨーロッパ以外にも、アフリカ、オーストラリア、東南アジア、メソアメリカ、南米など、世界各地で洞窟壁画が発見されています。

アフリカ: 南アフリカのオカシュランバ・ドラケンスバーグには、サン人が描いた動物や人間の壁画が残っています。また、ソマリランドのラース・ゲール洞窟や、サハラ砂漠地域でも洞窟壁画が発見されています。
オーストラリア: カカドゥ国立公園には、黄土で描かれた壁画が多く残っています。これらの壁画は、内容から年代を推測することができます。
東南アジア: タイ、マレーシア、インドネシアには、多くの洞窟壁画があります。インドネシアのスラウェシ島では、4万5500年以上前の動物の壁画や、手形の壁画が発見されています。
メソアメリカ: メキシコのオシュトティトランやフストラワカには、オルメカ文明の概念を表す壁画があります。また、マヤ文明の遺跡にも洞窟遺跡が多数存在します。
南米: ペルーのトケパラには、狩猟の様子を描いた壁画があります。アルゼンチンのクエバ・デ・ラス・マノスには、手形の壁画があります。

ネアンデルタール人による壁画

近年、壁画表面を覆う薄い石灰質を最新の年代測定法で調査した結果、一部の壁画が4万800年以上前に描かれていたことが判明しました。これは、当時ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人が描いた可能性を示唆しています。ただし、ネアンデルタール人が突如として壁画を描き始めたとは考えにくいという否定的な見解もあります。

まとめ

洞窟壁画は、先史時代の人々の生活や文化、信仰を現代に伝える貴重な遺産です。その芸術性や歴史的価値は高く、世界各地で研究が進められています。今後も新たな発見が期待されており、人類の歴史を解き明かす上で重要な役割を果たすでしょう。

参考文献

『Aesthetics and Rock Art』トーマス・ヘイド、ジョン・クレッグ編集、Ashgate、2005年。ISBN 0-7546-3924-X

関連項目

先史時代
ボディ・ペインティング
ペトログリフ

外部リンク

マレーシアの洞窟壁画（英語）
* タイの洞窟壁画（英語）

もう一度検索