紫雲膏

紫雲膏（しうんこう）

紫雲膏は、古くから日本で使用されてきた漢方の軟膏剤です。主成分はシコン（紫根）とトウキ（当帰）であり、これらの生薬が持つ効果によって、様々な皮膚のトラブルに効果を発揮します。独特の赤紫色と特有のにおいが特徴で、その歴史は江戸時代にまで遡ります。

歴史

紫雲膏のルーツは、中国の明代に著された医学書『外科正宗』に記載されている「潤肌膏」にあります。潤肌膏は、シコン、トウキ、ゴマ油、ミツロウを配合したものでしたが、華岡青洲が豚脂を加えることで、より塗りやすく改良し、紫雲膏として完成させました。

適応症

紫雲膏は、以下のような症状に用いられます。

火傷：軽度の火傷に対して、炎症を抑え、皮膚の再生を促進します。
痔核による疼痛、肛門裂傷：患部の炎症を鎮め、痛みを緩和します。
しもやけ（ひび・あかぎれ）：血行を促進し、皮膚の修復を助けます。
魚の目：患部を軟化させ、痛みを和らげます。
あせも、ただれ：炎症を抑え、かゆみを緩和します。
外傷：傷口を保護し、治癒を促進します。
湿疹・皮膚炎：炎症を抑え、かゆみを緩和します。

ただし、重度の熱傷や外傷、化膿性の創傷、患部の湿潤やただれのひどい場合は禁忌とされています。

薬理作用

紫雲膏の主成分であるシコンに含まれるシコニンには、抗炎症作用、肉芽形成促進作用、抗菌作用、抗腫瘍作用などが報告されています。これらの作用が複合的に働き、皮膚の炎症を抑え、組織の修復を促進すると考えられています。近年では、リーシュマニア症に対する有効性も報告されていますが、詳しい作用機序はまだ解明されていません。

処方

紫雲膏の一般的な処方は以下の通りです。

シコン：100 - 120
トウキ：60 - 100
豚脂：20 - 30
ミツロウ：300 - 400
ゴマ油：1000

これらの成分を混合し、軟膏として製造されます。各製薬会社によって、配合比率や添加物が異なる場合があります。

その他

紫雲膏は、薬学部の実習で実際に製造されることもあります。これは、材料さえあれば比較的容易に製造できるためです。しかし、自己判断での製造や使用は避け、医師や薬剤師の指示に従うようにしてください。

注意点

紫雲膏を使用する際には、以下の点に注意してください。

重度の熱傷や外傷には使用しない：症状を悪化させる可能性があります。
化膿性の創傷には使用しない：感染を悪化させる可能性があります。
患部の湿潤やただれのひどい場合は使用しない：症状を悪化させる可能性があります。
使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師または薬剤師に相談する：アレルギー反応などが起こる可能性があります。

市販薬

紫雲膏は、多くの製薬会社から一般用医薬品として販売されています。製品によって、成分や添加物が異なる場合がありますので、使用前に必ず添付文書をよく読んでください。

代表的な製薬会社:
ウチダ和漢薬
大晃生薬有限会社
大草薬品
クラシエ薬品
コーア製薬
小太郎漢方製薬
小林製薬
剤盛堂薬品
松浦薬業
山本漢方製薬
* アルフレッサ ファーマ

関連情報

紫雲膏と類似した軟膏剤として、華岡青洲が考案したとされる中黄膏があります。

もう一度検索