細入村

富山県の南部に位置していた細入村（ほそいりむら）は、かつて神通川の左岸に沿った山間地域に広がる村でした。およそ二千人ほどの住民が暮らしていましたが、「平成の大合併」の流れを受け、2005年（平成17年）4月1日に富山市並びに上新川郡大山町、大沢野町、婦負郡婦中町、八尾町、山田村と共に新たな富山市の一部となり、村としての歴史に幕を下ろしました。現在は、富山市の細入地域としてその名が残っています。

地理

細入村の領域は、その大部分が神通川の左岸に広がる山間部で占められていました。地理的には、神通川を隔てて旧大沢野町と、また西側の山塊を挟んで旧八尾町と隣接し、南側は岐阜県飛騨市に接していました。村の中ほどには、庵谷峠や片路峡といった地形的な難所があり、これが交通の要衝であると同時に、村を南北に隔てる地理的な境界ともなっていました。これにより、北部の盆地状で比較的平地が多い楡原（にれはら）地域と、かつて関所が置かれ街道の分岐点でもあった南部の猪谷（いのたに）地域とでは、異なる文化的な様相が見られました。これら楡原と猪谷が、それぞれ村の中心的な役割を担っていました。村の主要な河川は、豊かな水量を誇る神通川です。

歴史

細入村は、1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行に伴い、婦負郡に属する庵谷村、笹津村、岩稲村、割山村、楡原村、片掛村、猪谷村、蟹寺村、加賀沢村の九つの村が合併して誕生しました。昭和に入ると、1947年（昭和22年）11月1日には、昭和天皇が戦後の地方巡幸で村を訪れ、スギ苗の植樹を行われたという歴史的な出来事もありました。そして、2005年（平成17年）4月1日、「平成の大合併」により、細入村を含む富山地域7市町村が合併し、新たな富山市が発足しました。これにより、細入村は100年以上の歴史に一つの区切りをつけました。

地域・行政

教育施設としては、細入村と隣接する大沢野町が共同で運営する学校組合による小中学校がありました。村の合併に先立つ2003年4月には、村内にあった楡原小学校と猪谷小学校が統合され、『細入村・大沢野町学校組合立神通碧小学校』として新たに開校しています。また、村長としては、合併前の最後の村長を野尻昭一氏が務めていました（2003年から）。

交通

細入村には空港はありませんでしたが、富山市にある富山空港が利用可能でした。鉄道に関しては、JR高山本線が村内を縦断しており、猪谷駅と楡原駅が設置されていました。かつては、猪谷駅が岐阜県方面へと向かう神岡鉄道神岡線の起点でもありました。バス路線は、富山地方鉄道バスが運行し、住民の足となっていました。道路については、村内に高速道路のインターチェンジはなく、北陸自動車道を利用する際は富山市の富山インターチェンジが最寄りの利用地点でした。しかし、主要幹線道路である国道41号線が村内を縦貫しており、南北への交通を担っていました。この国道41号線沿いには、休憩施設として道の駅「細入」が設置されており、地域の情報発信や物産販売の拠点となっていました。

名所・旧跡・観光スポット

自然豊かな細入村には、いくつかの名所や観光スポットがあります。

神通峡（じんづうきょう）: 神通川の上流部に広がる美しい峡谷で、季節ごとの景色が楽しめます。
神通峡岩稲温泉楽今日館（いまいずみおんせんらっきょうかん）: 岩稲地区にある温泉施設で、名称は地元の特産品であるラッキョウにちなんで名付けられました。日帰り入浴や宿泊が可能です。
割山森林公園天湖森（わりやましんりんこうえんてんこもり）: 割山地区にある広大な森林公園で、豊かな自然の中でレクリエーションやキャンプなどが楽しめます。
飛越ふれあい物産センター・林林（ひえつふれあいぶっさんセンター・りんりん）: 国道41号線沿いの道の駅に併設された物産センターで、富山県側だけでなく、隣接する岐阜県（飛騨）側の特産品なども扱っており、地域交流の拠点ともなっていました。
* 猪谷関所館（いのたにせきしょかん）: かつて交通の要衝であった猪谷地区に、江戸時代の関所を再現した施設です。当時の街道文化や歴史を学ぶことができます。

これらのスポットは、村が合併した後も、富山市細入地域の大切な観光資源となっています。

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