結城豊太郎

結城豊太郎

結城 豊太郎（ゆうき とよたろう）は、1877年（明治10年）5月24日に生まれ、1951年（昭和26年）8月1日に74歳でその生涯を終えた、日本の著名な銀行家、政治家です。彼は大蔵大臣や日本銀行総裁、さらには第5代日本商工会議所会頭といった、日本の経済・金融政策に関わる極めて重要なポストを務めました。

生い立ちと学歴

現在の山形県南陽市赤湯に位置する、酒造業を営む結城家の出身です。幼い頃から学業に秀でており、赤湯小学校卒業時には山形県知事賞を受賞する栄誉に浴しています。旧制山形中学校で学び、1899年（明治32年）7月には第二高等学校を卒業。その後、東京帝国大学へと進み、1903年（明治36年）7月に同大学法科大学政治学科の課程を修了しました。

日本銀行と安田でのキャリア

大学卒業後の1904年（明治37年）1月7日、後に総理大臣となる高橋是清の推薦を受けて日本銀行に入行しました。日銀では本店検査局やニューヨーク代理店での勤務、京都支店長、総裁秘書役、大阪支店長など、多様な部署で経験を積み重ねました。1919年（大正8年）8月には、当時の井上準之助総裁の推挙により理事に就任し、大阪支店長も兼任しました。

しかし、公私にわたり彼を引き立てた安田善次郎が予期せぬ死を遂げたことを機に、結城は日本銀行を退職します。1921年（大正10年）11月28日には安田保善社の専務理事に迎えられ、同年12月からは安田銀行の副頭取も務めることになりました。さらに1926年（大正15年）1月には安田学園の理事長にも就任するなど、安田グループの要職を歴任しました。また、安田善次郎が計画していた東京大学の講堂建設事業を引き継ぎ、東大安田講堂の完成に尽力しました。

公職への復帰と要職

欧米の経済状況を視察して帰国した後、1929年（昭和4年）3月に安田を退社し、産業調査会を立ち上げました。翌1930年（昭和5年）9月には日本興業銀行の第6代総裁に就任。さらに1936年（昭和11年）11月10日に設立された商工組合中央金庫の初代理事長という重責を担いました。

1937年（昭和12年）1月には第5代日本商工会議所会頭に就任。同年2月2日には林銑十郎内閣において、大蔵大臣、拓務大臣、企画庁総裁を兼任する形で入閣しました。また、同年5月31日には貴族院の勅選議員にも選ばれています。林内閣はわずか4ヶ月で崩壊しましたが、続く近衛文麿内閣からも大蔵大臣としての留任を求められたものの、これを辞退しています。さらに、病気療養中の池田成彬の後任として、1937年（昭和12年）7月27日から1944年（昭和19年）3月18日まで、第15代日本銀行総裁を務めました。

故郷への尽力

これほど多忙で要職を歴任する中でも、結城は故郷である山形県赤湯への深い思いを常に持ち続けていました。赤湯は温泉地として知られていましたが、生活用水や防火用水の不足に悩んでいる状況を知り、自身の費用を投じて東京から水道工事の専門家を派遣し調査を実施させました。そして、工事費用の一部を寄付するなど強力な支援を行い、赤湯水道の完成に貢献しました。このほかにも、母校である赤湯小学校にピアノなどの楽器購入費用を寄付したり、「臨雲文庫」と名付けられた図書館を町に寄贈するなど、故郷の文化・教育振興にも私財を惜しまず尽力しました。

晩年と記念館

第二次世界大戦終結後の1946年（昭和21年）3月20日、貴族院議員の職を辞しました。その後、1948年（昭和23年）4月には三重県津市にある結城神社の第20代宮司を務めた時期もあります。1951年（昭和26年）8月1日、74歳で死去。墓所は東京都の青山霊園と、故郷・南陽市の東正寺にあります。

結城はその生涯において収集した書籍や愛用していた調度品などを、当時の赤湯町に寄付しました。この寄付を基に、町は1935年（昭和10年）に「赤湯町立図書館臨雲文庫」を開庫しました。市制施行に伴い「南陽市立結城記念館」と改称された後、1995年（平成7年）4月には新館が竣工し、現在の「南陽市立結城豊太郎記念館」としてリニューアルオープンしています。

人物・交流

妻の茂登は、赤湯小学校時代の同級生であり、地元で旅館を経営する石岡家の娘でした。三女の久子は、後に外務大臣などを務めた藤山愛一郎のもとに嫁いでいます。また、政治家である三木武夫と森睦子の結婚においては、仲人を務めるなど、政財界に広い人脈を持っていました。日本銀行時代の部下には、後に安田銀行の社長を務めた園部潜がいます。

これらの功績や人生については、複数の伝記が出版されています。故郷への貢献、金融・経済界における指導力、そして激動の時代に日本の舵取りに関わった人物として、その名前は現在も語り継がれています。

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