綾の照葉樹林

綾の照葉樹林：日本最大級の原生的な照葉樹林

宮崎県綾町に広がる綾の照葉樹林は、その広大さと原生的な自然環境から、日本最大級の照葉樹林として高く評価されています。約2000ヘクタールにも及ぶこの森は、多様な動植物の宝庫であり、数々の指定・登録を受けている貴重な自然環境です。

数々の選定と登録

綾の照葉樹林は、その生態系の豊かさから、複数の機関によって選定・登録されています。1985年には綾川湧水群として名水百選に選ばれ、「21世紀に残したい日本の自然百選」にも選定されました。さらに、水源の森百選や森林浴の森百選にも認定されており、その自然環境の価値の高さが広く認められています。

特筆すべきは、2012年にユネスコエコパーク（生物圏保護区）に登録されたことです。これは、綾町だけでなく、小林市、西都市、国富町、西米良村にまたがる総面積14,580ヘクタールにわたる広大な地域を対象としており、国内では32年ぶり5カ所目の登録となりました。綾ユネスコエコパークとして、国際的な認知も得ています。

豊かな動植物相

綾の照葉樹林には、実に848種類もの植物が確認されており、そのうち263種類が照葉樹林を構成する種です。高木25種のうち24種類も確認されており、照葉樹林の多様性がうかがえます。

動物相も非常に豊かで、希少種であるクマタカやイヌワシをはじめ、ニホンカモシカ、ムササビ、ヤマネ、フクロウ、オシドリなどが生息しています。この地域は、ニホンカモシカとイヌワシの分布の南限でもあることから、生物地理学的にも重要な位置を占めています。

さらに、環境省と宮崎県のレッドデータブックで絶滅危惧I類に指定されているキリノミタケの群生地も確認されています。キリノミタケは、日本国内でも限られた地域と、テキサス州でしか確認されていない非常に珍しいキノコであり、綾の照葉樹林の生態系の特殊性を示す一例と言えるでしょう。

周辺環境との調和

綾の照葉樹林は、周辺環境とも深く関わっています。大淀川の支流である綾南川と綾北川が区域内を流れ、水源地としての役割も担っています。また、照葉大吊橋や宮崎県道26号宮崎須木線なども区域内を通っており、自然と人間の共存が図られている様子が見られます。

保全と未来

綾の照葉樹林は、その貴重な生態系を守るため、様々な保全活動が進められています。ユネスコエコパーク登録を機に、持続可能な地域開発と自然保護の両立がより一層求められています。この貴重な自然遺産を未来へ繋ぐため、地域住民や関係機関による継続的な努力が不可欠です。 将来、世界遺産登録を目指す取り組みも期待されます。

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