オシドリ

オシドリ (鴛鴦)

オシドリ（学名: Aix galericulata）は、カモ目カモ科に分類される鳥類で、その美しい姿と生態で知られています。

分布

オシドリは東アジアに広く分布しており、ロシア南東部、朝鮮半島、日本、中国などで見られます。日本では、主に北海道や本州中部以北で繁殖し、冬になると本州以南、特に西日本へと南下して越冬します。一般的には漂鳥として知られていますが、冬鳥として国外から渡来することもあります。また、イギリスへの移入・定着や、アメリカ、中欧でも生息が確認されています。

形態

オスの全長は約48センチ[[メートル]]、メスは約41センチ[[メートル]]で、オスの方がやや大きいです。翼長はオスが21-24.5センチ[[メートル]]、メスが21.7-23.5センチ[[メートル]]、翼開張は68-74センチ[[メートル]]です。体重はオスが約0.6キログラム、メスが約0.5キログラムです。嘴の先端は白いのが特徴です。

繁殖期のオスは、特にその色彩が鮮やかで、後頭部の冠羽、頬から頸部にかけて伸びる羽毛、白い顔、紫色の胸、首の白い筋模様、そして橙色の銀杏状の風切羽が目を引きます。一方、メスは全体的に灰褐色で、目の周囲から後頭にかけて白い筋模様が見られます。非繁殖期のオス（エクリプス）もメスと同様に灰褐色の羽衣をしています。

生態

オシドリは、渓流や湖沼などの水辺に生息し、水辺の木陰を好むため、開けた水面にはあまり姿を現しません。時には木の枝に留まることもあります。食性は雑食で、水生植物、果実、種子、昆虫、陸生の貝などを食べます。水面だけでなく陸上でも採食を行います。

繁殖期は4月から7月で、山地の渓流や湖沼周辺の大木の樹洞に巣を作ります。まれに地表に巣を作ることもあります。メスは9-12個の卵を産み、抱卵はメスのみが行い、期間は約28-30日です。孵化した雛は、自力で巣から地面に飛び降りることが確認されています。孵化後40-45日で飛翔できるようになります。厳冬期には、数十羽から数百羽の群れを形成することもあります。

人間との関係

「おしどり夫婦」という言葉は、仲の良い夫婦の例えとして使われますが、鳥類のオシドリは毎年パートナーを変えることが知られています。抱卵はメスのみが行い、育雛も夫婦で協力することはありません。古くからその姿は多くの句に詠まれており、小林一茶の句にも登場します。また、新潟県にはオシドリ夫婦の民話も存在します。和名の「オシ」は、「雌雄相愛し」に由来すると考えられ、漢字の鴛がオス、鴦がメスを指します。夫婦の仲が良いことを表す言葉として、「鴛鴦契」「鴛鴦偶」などがあります。

普通切手の意匠

オシドリは、その美しい姿から、過去に何度か普通切手の意匠にも採用されています。1955年（昭和30年）発行の5円切手、1992年（平成4年）発行の41円切手、そして2007年（平成19年）発行の50円切手がその例です。

種の保全状況評価

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、軽度懸念（LC）に指定されています。日本では、環境省のレッドリストで情報不足（DD）と評価されていますが、多くの都道府県では絶滅危惧種として指定されており、その保護が求められています。

各都道府県のレッドリスト指定状況

絶滅危惧IA類: 三重県
絶滅危惧IB類: 埼玉県、東京都（区部、北多摩と南多摩は絶滅危惧II類、西多摩は準絶滅危惧）、沖縄県
重要保護生物（B）: 千葉県（環境省の絶滅危惧IB類に相当）
絶滅危惧II類: 京都府、徳島県、福岡県
準絶滅危惧: 山形県、茨城県、栃木県、石川県、福井県、岐阜県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、高知県、佐賀県、大分県
ランクC: 兵庫県（環境省の準絶滅危惧に相当）
希少種: 北海道、滋賀県
地域個体群（LP）: 長野県
情報不足（DD）: 宮崎県
その他: 岩手県（Dランク）、群馬県（注目）、神奈川県（減少種）、大阪府（要注目）、奈良県（注目種）

その他

1956年に野毛山動物園が繁殖賞を受賞し、1960年には福岡市動物園が人工繁殖で繁殖賞を受賞しています。

自治体指定の鳥

オシドリは、多くの都道府県や市町村で自治体の鳥として指定されており、親しまれています。

指定自治体

都道府県: 山形県、鳥取県、長崎県
市: 飯山市、佐野市
町: 十和田湖町（現十和田市）、大子町、相模湖町（現相模原市）、日野町 ([[鳥取県)]]、さつま町
村: 皆瀬村 (秋田県)（現湯沢市）、大山田村 (三重県)（現伊賀市）

また、韓国の忠清南道、忠州市、論山市、抱川市、茂朱郡でも指定されています。