綿実油

綿実油：ワタの種子から生まれた食用油

綿実油は、綿花の種子から抽出される植物油です。古くから食用油として利用されており、その歴史は19世紀のアメリカやヨーロッパにまで遡ります。しかし、第二次世界大戦後、大豆油の生産増加に伴い、綿実油の生産量は減少傾向にあります。

生産と消費量の現状

1995年から1997年にかけての世界平均生産量は、約400万トンでした。一方、日本の生産量は6000～7000トンと比較的小規模ですが、アメリカからの輸入分を含めると、年間約2万トンが消費されています。

綿実油は、加熱による酸化が比較的少ないという特徴があります。このため、スナック菓子やフライ料理などの揚げ物、ツナ缶の油漬けなど、幅広い用途で使用されています。しかし、ショートニングやファットスプレッドなどの加工油脂原料としては、他の油脂に比べてコストが高いため、その用途は減少しています。1996年の日本の消費量は約7000トンでした。現在、日本で綿実油を製造・販売しているのは、大阪府柏原市の岡村製油が唯一です。

綿実油の性質

綿実油の脂肪酸組成は、リノール酸が50～60％、パルミチン酸が20～30％、オレイン酸が約20％を占めています。その他、ステアリン酸やミリスチン酸も少量含まれますが、α-リノレン酸は比較的少ないのが特徴です。

精製された綿実油は、ヨウ素価が102～120の半乾性油に分類されます。発煙点は233℃、引火点は315℃と、比較的高い温度まで加熱に耐える性質を持っています。化学物質登録番号(CAS登録番号)は[8001-29-4]、鹸化価は190～197、比重は0.916～0.922です。

まとめ

綿実油は、その酸化しにくい性質から、揚げ物など高温調理に適した食用油として、現在も一定の需要があります。生産量は減少傾向にありますが、独特の性質と用途から、今後もその存在感を保っていくと予想されます。日本国内では、岡村製油による製造・販売がその市場を支えています。ただし、他の油脂と比較して価格が高いという課題があり、用途拡大に向けた更なる研究開発が期待されます。

参考文献

藤田哲 『食用油脂 - その利用と油脂食品』 幸書房、2000年、ISBN 4-7821-0173-2、ISBN 978-4-7821-0173-5。

関連項目

ピーナッツオイル
* ゴシポール（未精製の綿実油に含まれる色素）

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