総括 (連合赤軍)とは？意味をやさしく解説

総括とは

「総括」とは、一般的には、物事をまとめ、全体の状況を把握することを指します。特に、労働運動や政治運動においては、これまでの活動内容や成果を評価・反省し、今後の活動に活かすという意味合いで用いられます。これは、組織や個人の成長において不可欠なプロセスであり、工業界でいうPDCAサイクルの「C（点検・評価）」に相当するものです。

左翼運動における総括

左翼団体においては、取り組んでいた闘争が一段落した際に、これまでの活動を締めくくる活動報告として「総括」が行われていました。これは、闘争の成果や反省点を明らかにし、今後の活動に繋げていくための重要なステップでした。

北朝鮮における総括

1960年代、社会主義化されていた北朝鮮では、朝鮮労働党が「生活総和」と呼ばれる、総括に極めて近い思想教育体系を確立しました。この方式は、個人や組織の活動を評価し、反省を促すものであり、日本国内の朝鮮総聯の組織内にも深く浸透していました。

連合赤軍における「総括」の異質性

1971年、共産主義者同盟赤軍派と日本共産党（革命左派）神奈川県委員会が統合し、連合赤軍が結成されました。連合赤軍は、軍事訓練を通じて「革命戦士の共産主義化」を推し進めようとしましたが、その過程で「総括」が異常な形で利用されました。

「総括」の名を借りたリンチ

連合赤軍のリーダーであった森恒夫は、各個人の日常の行動様式や過去の活動を「総括」することを通じて「革命戦士の共産主義化」を目指しました。これは、表面的には北朝鮮の生活総和と似たようなものでしたが、その実態は大きく異なっていました。

連合赤軍の「総括」では、「総括に集中するため」として、正座や絶食の強要、暴行、ロープによる拘束などが行われました。これは、単なる反省や評価の域を超え、メンバーに対する拷問に近い行為でした。特に、革命左派のリーダーであった永田洋子を中心とするメンバーは、赤軍派の女性メンバーに対して身なりや闘争姿勢への批判を繰り返し、森の主張を後押ししました。

エスカレートする「総括」

合同軍事訓練後、連合赤軍は「新党」の結成を宣言し、「革命戦士の共産主義化」を最重要課題としました。森と永田を中心とするメンバーに対する「総括」要求は、次第にエスカレートしていきました。当初は作業から外されるだけだったのが、食事を与えられなくなり、最終的には暴行が加えられるようになりました。

1971年12月31日には、ついに最初の犠牲者が出ました。森はこれを「総括できなかったことによる敗北死」と解釈し、方針を改めることなく、その後も「総括」と称して虐待を続けました。1972年2月までの約2ヶ月間で、12名のメンバーが犠牲となりました。

「総括」を要求されたメンバーは、それぞれ自分自身について「総括」を述べましたが、森に認められることはありませんでした。森の理論を明確に理解していた者はおらず、何が問題とされているのか、どうすれば「総括」できるのか分からないまま、多くのメンバーが苦しみました。

連合赤軍事件の悲劇

連合赤軍における「総括」は、本来の目的である活動の評価・反省から逸脱し、メンバーを支配・虐待するための手段へと変質しました。この事件は、思想や理論が狂信的に利用されることで、いかに人間性を喪失してしまうかを象徴しています。連合赤軍事件は、カルト的な集団における過激な思想の危険性を現代に伝える教訓として、忘れてはならない悲劇です。

参考資料

読売新聞大阪本社社会部（編）『連合赤軍 : この人間喪失』潮出版社、1972年。
警備研究会（編）『わかりやすい極左・右翼・日本共産党用語集』（三訂）立花書房、2008年。

総括 (連合赤軍)