総販 (システム)

総販（そうはん）とは

総販（そうはん）は、北海道旅客鉄道（JR北海道）が独自に開発・運用している乗車券類販売系のコンピュータシステムです。その正式名称は総合販売システム（そうごうはんばいシステム）ですが、一般には総販として知られています。

このシステムは、主にJR北海道の駅にある「みどりの窓口」や、かつて旅行販売を担っていた「ツインクルプラザ」の業務を支えるオンラインシステムとして機能しています。JRグループ共通の指定券予約・発券システムであるマルスシステムとは異なり、JR北海道が自社線内で完結する商品の販売を管理するために構築されました。2019年10月1日以降は、一部の船車券発行機能や駅の売上管理業務を担う「駅収入管理システム」としての側面も持ち合わせています。

総販の機能は、JR北海道で使用されているマルス端末のメインメニュー内にある「個別業務」という項目の一部として統合されており、コンピュータ上でマルスシステムと総販の操作を切り替えることが可能です。総販で発券された乗車券類のデータは、全て総販のホストコンピュータに記録・管理されます。券番号を用いたデータの照会などが可能であり、マルスシステムのホストコンピュータに接続する必要がない、自社完結型の商品販売に特化して利用されます。

システム構成

総販システムは、駅の窓口などで利用される「販売端末」に加え、PC端末を用いた「後方端末」や「情報端末」によって構成されています。

販売端末
「みどりの窓口」などに設置されている窓口係員操作用の端末です。マルス端末の「個別業務」機能が総販に該当し、さらに「鉄道業」「共通業務」という画面に分かれています。また、旅行商品を扱うための専用画面も備えています。

後方端末
販売端末や自動券売機などからの収入を締め切った際に必要な帳票類の印刷や、旅行商品（エスコート商品など）の旅行人員管理といった業務に利用されます。

情報端末
駅や支店などにおける営業成績データの閲覧や印刷に用いられます。

販売 端末の主な機能

鉄道業画面
JR北海道線内で完結する乗車券類の発券に使用されます。具体的には、乗車券、自由席特急券、定期券、回数券、特別企画乗車券、イベントチケット、契約乗車票（他のJR各社でいう「マル契」）などが総販で発券されます。ただし、JR他社に関連する乗車券類や、自社線完結であっても指定券の発券は総販では扱えず、マルスシステムを利用する必要があります。また、東京モノレールなど一部の船車券の発券も可能です。総販で発行された乗車券類は、JR他社では正式な乗車券として認められないため、JR北海道線内のみで有効な商品に利用が限定されます。他社に関連する契約乗車票のうち、JR東日本関連はマルスで発券可能ですが、それ以外の他社関連については手書きの契約乗車票が用いられる場合があります。なお、自社完結商品であってもマルスシステムで発券することも可能です。

共通業務画面
窓口係員が誤って発券した乗車券類や、乗車変更などにより不要となった旧券の処理（「控除」と呼びます）、および乗車券類の払い戻しに関する操作に利用されます。

旅行業画面
旅行パッケージ商品（JR券と宿泊などがセットになったもの）や、添乗員が同行する商品の販売に利用されます。また、東京モノレール以外の船車券や、旅館券（宿泊券）、観光券、航空券などの発券にも使用されます。ただし、マルスシステムへの接続が必要な旅行商品は、この画面ではなくマルスシステム側の機能を使用します。

券面表示の特徴

総販で発券された乗車券類には、いくつかの特徴的な印字が見られます。

「総販」印字: 券面の左下隅に、四角形で囲まれた「総販」の文字が印字されます。
券番号: 総販券の券番号は10桁（4桁-4桁-2桁）です。これはマルス券の7桁（5桁-2桁）とは異なります。総販の券番号は、最初の1桁がチェックディジット、続く3桁が総販端末番号、その次の4桁が乗車券番号（操作通番）、最後の2桁が乗車券番号の枝番号という構成になっています。
N符号: 券面の右下隅に「N」の文字とそれに続く3桁の数字が印字されています。これは「N符号」と呼ばれ、総販における収入管理上の日付を示すものです。その日の収入精算を終えた後に発券された券は、同じ日であっても精算前の券とは異なるN符号が印字されます。また、翌日に精算が行われるまでは、日付が変わってもN符号は同じままとなります。

簡易委託駅での扱い

一部の簡易委託駅では、総販システムを使用して乗車券類を発券することが可能です。これらの券には、券面の駅名の前に丸で囲まれた「ム」の文字が、また発券箇所（発行箇所）の駅名印字部分には丸で囲まれた「簡」の文字が付加されます。

簡易委託駅での発券は、受託者が管理駅に必要な枚数を依頼し、管理駅の総販端末で発券されます。このため、券面に印字される発行日は管理駅での発券日となりますが、乗車券の使用開始日欄は空欄となっており、受託者がゴム印などで日付を押印して使用開始日を示します。乗車券には、通常の乗車区間表記に加え、金額のみを印字する「-円区間」といった金額式表記のものが存在する場合があります。

クレジットカード決済

マルスシステムには、乗車券発券と同時にクレジットカード決済が可能な機能がありますが、総販自体にはこの機能がありません。総販で発券する乗車券類をクレジットカードで販売する場合、窓口係員はまず総販で券を発券し、その後、マルスシステムにある「CS金額入力」（CSはクレジットカードを指すJR共通の略称）画面で販売金額を手入力し、決済手続きを行います。この際、クレジットカードで購入されたことを示すため、券面に「C制R-」と印字された判子を押すのが一般的です。「C制」はクレジットカード購入を示す記号で、払戻しなどに制限があることを意味します。「R-」は払戻し操作時に必要となる3桁の通番が入る箇所です。なお、ツインクルプラザでは、マルスシステムの機能ではなく、G-CATやCATTといった専用端末を使用してクレジットカード決済を行っていました。

その他の情報

JR北海道でのMV端末（顧客操作型マルス端末）導入に伴い、指定席回数券や特定の企画乗車券など、指定券を伴う商品は、自社完結商品であってもマルスシステムでの発券に移行しています。
自社完結商品であってもマルスシステムでの発券は可能であるため、一部の鉄道ファンが、同じ区間の入場券を総販券とマルス券の両方で購入することがあります。
過去には、札幌圏の一部区間（例：札幌-琴似・八軒間など）の回数券や定期券（磁気券）において、券面に複数の駅名が印字される特例がありましたが、これは2015年3月31日発売分をもって終了しました。マルス券では複数駅名は印字されませんでしたが、特例自体は有効であり、券面表示のない側の駅でも自動改札機を問題なく通過できました。