W型エンジン

W型エンジンの概要

W型エンジンは、クランクシャフトに対して3バンクまたは4バンクのシリンダーをW字型に配置したレシプロエンジンです。この構造は、隣接するバンクが同じクランクピンを共有する点で、V型エンジンの発展形とも考えられています。特に、3バンク型は英国政府支給品のマークに似ているため、ブロードアロー型とも呼ばれています。

特徴

W型エンジンのメリットは、同じ気筒数の場合、クランクシャフトを短くできる点にあります。特に12気筒や16気筒といった多気筒エンジンでは、その効果が顕著です。しかし、3本のコネクティングロッドが1つのクランクピンに接続されているため、クランクピンやジャーナルの直径を大きくする必要があり、結果としてクランクシャフトは太く作られます。

主な種類

W型エンジンには以下のような種類があります：

• - W型3気筒（W3）
• - W型8気筒（W8/WR8）
• - W型12気筒（W12/WR12）
• - W型16気筒（W16/WR16）
• - W型18気筒（W18）
• - W型24気筒（W24）
• - W型32気筒（W32/WR32）
• - W型48気筒（W48）
• - W型64気筒（W64/WR64）

歴史

古典的なW型エンジンは、1906年にアレッサンドロ・アンザーニによって開発された3気筒W型エンジンが起源です。このエンジンは、後にルイ・ブレリオの「ブレリオ XI」に搭載され、1909年にイギリス海峡横断飛行を成功させました。1917年には、ネイピア・アンド・サンが最初の3バンク・W型12気筒エンジンとなるネイピア ライオンを開発しました。このエンジンは、シュナイダー・トロフィー・レースでの優勝に使用されました。

1920年代には、ロレーヌ社が航空機向けの450馬力クラスの「12Ed」エンジンや600馬力の「18Ka」エンジンを製造しました。同時期には、イゾッタ＝フラスキーニも820馬力の「Asso 750」エンジンを開発しました。

しかし、この3バンク型エンジンは多気筒化に伴い、中央バンクの吸排気系の取り回しや冷却に問題が発生し、次第に星型エンジンや水冷V型エンジンに取って代わられることになりました。第二次世界大戦後には、レース用や試作車での採用例が見られましたが、商業的には成功した事例はほとんどありません。

また、1990年にはライフがW型12気筒エンジンを使ってF1に参加しましたが、全戦で予備予選落ちとなりました。その後、アウディやフォルクスワーゲンがW型エンジンの開発を試みるも、いずれも信頼性が欠けたため市販には至りませんでした。

4バンク型エンジン

2001年、フォルクスワーゲングループは「ダブルV」構成の4バンク型W12エンジンを発表しました。このエンジンは、VR6型狭角V型エンジンを二つ組み合わせたもので、「WR型」とも区別されています。この4バンク型エンジンは、吸気系や排気系の取り回しもV型エンジンに近く、クランクシャフトを短くする利点を活かせる設計です。

オートバイの3バンク型

W型エンジンは自動車用途では廃れていましたが、カスタムオートバイでは、Jim Feulingが3バンクW型3気筒エンジンを復活させました。このエンジンは、ハーレーダビッドソンのV型2気筒エンジンを基にしたもので、クランクピンには唯一のマスターコンロッドが装備されています。Feuling W3は最大180馬力を発揮し、カスタムバイク界で人気を博しました。しかし、Feuling自身の死去に伴い、2004年以降はこのエンジンの生産が終了しました。

結論

W型エンジンは、その独特な設計と複雑性から自動車や航空機の高性能エンジンとして多くの試みがなされてきましたが、市場での成功はあまり見られませんでした。技術の進化とともに、その運用方法や設計概念も見直され続けています。

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