松前崇広

松前崇広：激動の時代を生きた松前藩主

松前崇広（まつまえ たかひろ）は、文政12年（1829年）に松前藩9代藩主・松前章広の六男として生まれました。幼少の頃から武術、特に馬術に秀でていただけでなく、蘭学、英語、兵学など西洋の学問にも積極的に取り組みました。西洋事情や文物にも強い関心を持ち、電気機器や写真、理化学器械などを利用するなど、当時としては稀な西洋通でした。

嘉永2年（1849年）、甥である11代藩主・松前昌広の隠居により、その養子として家督を継ぎ、12代藩主となりました。幕府から北方警備強化のために松前城の築城を命じられ、嘉永6年（1853年）に完成。これは天守閣を持つ伝統的な建築技法を用いた江戸時代最後の城となりました。

安政元年（1854年）、幕府は対露警備強化のため箱館奉行を再設置。安政2年（1855年）には、松前藩領だった箱館周辺と蝦夷地を幕府直轄としました。その代償として陸奥国などに4万石を与えられましたが、蝦夷地での交易権を失い、藩財政は悪化しました。さらに、ニシン漁の不漁から網切騒動が発生し、藩政は混乱を極めました。

文久3年（1863年）、崇広は西洋通であることを見込まれ、幕府により寺社奉行に起用されます。元治元年（1864年）には老中格兼陸海軍総奉行、同年11月には老中に抜擢されました。老中として、第二次長州征討への対応や、外国との条約問題に奔走しました。しかし、兵庫開港問題で朝廷の勅許を得ずに独断で開港を決定したため、朝廷の怒りを買い、官位剥奪・謹慎処分を受けました。慶応2年（1866年）に松前に帰還しましたが、同年4月に熱病により38歳という若さで死去しました。

松前崇広の功績と評価

松前崇広は、激動の幕末期において、西洋の知識や技術を取り入れようとした開明的な藩主でした。老中としては、難しい外交交渉や国内問題に果敢に取り組みましたが、その政治手腕は必ずしも成功したとは言えません。しかし、西洋への深い理解と、それを取り入れようとする姿勢は、日本の近代化に貢献したと言えるでしょう。

年譜

文政12年（1829年）：誕生
嘉永2年（1849年）：松前藩主となる
文久3年（1863年）：寺社奉行に就任
元治元年（1864年）：老中格、老中に就任
慶応元年（1865年）：老中免職、蟄居
慶応2年（1866年）：死去

官位

嘉永2年（1849年）：従五位下、伊豆守
元治元年（1864年）：従四位下
慶応元年（1865年）：侍従

家族

実父：松前章広
養父：松前昌広
正室：維子（相馬益胤の娘）
養子：松前徳広（松前昌広の長男）

関連項目

阿部正外
松前藩
幕末

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