織田信邦

織田信邦：小幡藩主としての波乱の生涯

織田信邦は、江戸時代中期の上野国小幡藩の第7代藩主です。高家旗本・織田信栄の四男として生まれ、後に小幡藩主・織田信富の養子となり、藩主の座を継ぎました。

藩主就任と改革への試み

明和元年（1764年）7月、信邦は先代藩主・織田信富の末期養子として家督を相続し、信富の養女である呉姫を正室に迎えました。同年8月には10代将軍・徳川家治に御目見えし、11月には従五位下・美濃守に叙任されました。翌明和2年（1765年）には、藩主として初めて領地入りを果たしました。

藩主となった信邦は、家老に吉田玄蕃を登用し、藩政改革と財政再建に乗り出しました。玄蕃は、幕政に批判的な学者であった山県大弐の門弟であり、藩士の中にも大弐の門下生が多くいました。しかし、明和3年（1766年）に大弐が江戸城の防衛に関する兵学を論じたことが、幕府によって陰謀とみなされ、翌年処刑されるという事件（明和事件）が起こります。

失脚と懲罰的な移封

玄蕃と対立していた用人の松原郡太夫らは、「玄蕃が大弐と謀反を企てている」と信邦に讒訴し、玄蕃の失脚を画策しました。信邦は、幕府に相談することなく、藩の独断で吉田らを処分し、事態の収拾を図ろうとしました。しかし、この対応が幕府の不興を買い、信邦とその家老たちの対応が不適切と判断されてしまいます。

明和4年（1767年）8月、幕府は信邦に蟄居を命じ、実弟の信浮に家督を相続させました。同時に、国主格の待遇を廃止し、出羽国高畠藩への懲罰的な移封を命じました。さらに、江戸にあった上屋敷も没収されるという厳しい処分が下されました。この事件によって、家老の津田頼母、用人の津田庄蔵、年寄の柘源四郎は重追放、松原郡太夫らは追放という処分を受けました。

晩年と系譜

信邦は、天明3年（1783年）7月8日に39歳でこの世を去りました。

彼の正室である呉姫は、織田信右の長女で、最初は信乗の、次いで信富の養女となったと記録されています。

信邦には、織田信易と満姫という子女がおり、実弟の織田信浮を養子に迎えています。

信邦の生涯は、藩主としての責任と、幕府との関係の難しさを示す一例として、歴史に刻まれています。彼の藩政改革への試みは、結果として悲劇的な結末を迎えましたが、その事実は後世に語り継がれています。

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