織田信高

織田信高：数奇な運命を辿った織田信長の七男

織田信高（おだ のぶたか）は、安土桃山時代に生きた武将であり、戦国大名・織田信長の七男として知られています。通称を藤十郎といい、従五位下・左衛門佐の官位を授けられました。

生涯

天正4年（1576年）に生まれた信高は、幼名を小洞（こぼら/ごぼう）と名付けられました。母は高畑源十郎の娘・お鍋の方（興雲院）とされていますが、異説も存在します。天正10年（1582年）の甲州征伐の際には、兄である織田信忠の命で美濃国垂井に配され、信忠に一献を献上した記録が残っています。

しかし、同年、本能寺の変で父・信長が死去。信高は氏家行広に預けられて養育されました。天正13年（1585年）には、兄・織田信秀が羽柴姓を与えられた際、その仲介で豊臣秀吉に仕えることになります。天正19年（1591年）には、近江国神崎郡山上内に1060石の領地を与えられ、羽柴藤十郎と名乗るようになりました。さらに文禄4年（1595年）には、愛知郡にて粟野秀用の旧領1000石を加増され、合計2060石を領有しました。

関ヶ原の戦いでは、史料によって異なる記録が残っています。『寛政重修諸家譜』では、弟の信貞と共に東軍を支持したものの、本戦には間に合わなかったとされています。一方、『関原軍記大成』などでは、弟の信吉・信貞と共に西軍に属し、戦後に赦免されたとされています。おそらく後者が正しく、信吉と同様に西軍に属したために所領を失ったと考えられます。ただし、信高自身が本戦に参加したという記録は残っていません。

慶長7年（1603年）12月12日、信高は28歳という若さでこの世を去りました。墓所は、京都の大徳寺総見院にあります。

生母に関する謎

信高の生母については、一般的にはお鍋の方とされていますが、確証となる史料は乏しいのが現状です。お鍋の方が隠棲した際に同行したのが同母弟とされる織田信吉であり、信吉がお鍋の方の夫である小倉実房の所領も受け継いでいることから、お鍋の方と信高の繋がりは薄いと考えられます。また、信吉よりも年上であるにも関わらず、織田家中の席次が上であったことも、お鍋の方とは別の身分の高い側室が生母である可能性を示唆しています。その側室については一切不明ですが、信高が西美濃三人衆の氏家直元の次子である氏家行広に預けられたこと、また、氏家直昌が織田信孝と秀吉の戦いの際に信孝についた際、行広と共に信高も宇都宮で蟄居したことから、氏家氏、または氏家氏ゆかりの西美濃の有力国人の娘である可能性が指摘されています。また、信高の正室の生家である佐々氏も西美濃に近い尾張国北西部の春日井郡に位置していることから、佐々氏が信高の生母一族と繋がりがあった可能性も考えられます。当時、佐々成政の没落前であり、佐々氏が秀吉に対抗するために、身分の高い信高と縁組し、織田家の外戚となろうとしたとも考えられます。

幼名「小洞」が兄・信秀の幼名「大洞」と共通することから、同母兄弟である可能性も指摘されていますが、信秀の生母は稲葉氏である可能性が高く、信秀が秀吉の一族として厚遇されたのに対し、信高が冷遇された事実を考慮すると、同母兄弟である可能性は低いと考えられます。いずれにしても、信高の生母は不明な点が多く、今後の研究が待たれるところです。

子孫

信高の嫡男・高重は、元和2年（1616年）に幕臣として召し出され、近江・安房に2000石の所領を与えられました。高重の孫である信門は高家となり、以後、同家は明治維新まで高家旗本として存続しました。

フィギュアスケート選手の織田信成は、信高系の旗本織田家の末裔であるとされていますが、明治時代以前の旗本織田家と織田信成の家の家系が繋がらないため、その信憑性は定かではありません。

このように、織田信高は、織田信長の息子として生まれながらも、数奇な運命を辿り、多くの謎に包まれた人物であったと言えるでしょう。

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