美々信号場

北海道千歳市美々に所在する、北海道旅客鉄道（JR北海道）千歳線の信号場です。かつては旅客駅として機能しており、その電報略号はヒヒ、事務管理コードは▲131410でした。旅客営業時代の駅番号はH15が付与されていました。

歴史

美々信号場の前身である美々駅は、1926年（大正15年）8月21日に北海道鉄道札幌線（現在のJR北海道千歳線の一部）の開業と同時に、旅客も取り扱う駅として開設されました。駅が設けられた当時、周辺は犬上商船の経営者であり、北海道鉄道の社長でもあった犬上慶五郎が所有する広大な犬上牧場が広がっており、犬上氏自身の土地の近くに駅が設置された背景があります。

国有化は1943年（昭和18年）8月1日に行われ、北海道鉄道は戦時買収により鉄道省（国鉄）千歳線の一部となります。その後、路線の近代化が進み、1968年（昭和43年）には8月23日に植苗方面が、11月25日には千歳方面の複線化がそれぞれ供用を開始しました。

駅としての機能は次第に縮小されます。1974年（昭和49年）10月1日には荷物の取扱いが廃止されました。施設の改修も行われ、1979年（昭和54年）8月に跨線橋の着工が始まり、翌1980年（昭和55年）3月末には設置が完了しました。同年5月15日には直営駅から簡易委託駅を経て停留所に位置づけが変わり、無人駅となりました。利用状況を踏まえ、10月1日には2番線が千歳空港駅（現在の南千歳駅）折り返し列車などの待避線として活用されるようになります。駅舎も改築され、1981年（昭和56年）10月以前に新たな駅舎が使用開始されました。

国鉄分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日にはJR北海道に継承されます。1995年（平成7年）頃には、近隣に立地する千歳科学技術大学や工業団地「千歳美々ワールド」への通勤通学客の利便向上を目指し、駅舎の移転検討が行われましたが、南千歳駅との距離が近いことなどからこの計画は立ち消えとなりました。2004年（平成16年）4月にはホームが延伸され、一部列車で行われていたドアカットが廃止されました。また、2008年（平成20年）10月25日からはICカードKitacaが使用可能となります。

しかし、利用客数の減少は続き、過去5年間（2011年～2015年）の1日平均乗降客数が1名以下に留まる状況でした。このため、2016年（平成28年）6月にJR北海道は千歳市に対し当駅の廃止意向を伝え、市もこれを容認しました。廃止直前には、一部の普通列車が当駅を通過するようになっていました。

そして、2017年（平成29年）3月4日のダイヤ改正をもって旅客取扱いが終了し、美々信号場へと役割を変えました。この際、Kitacaを含む交通系ICカード全国相互利用サービス対応の簡易改札機が設置されていた駅としては、全国で初めて廃駅となった事例としても知られます。信号場化後、旧駅施設の撤去が進められ、同年10月には跨線橋が、2018年（平成30年）1月にはホームがそれぞれ撤去されました。

構造

現在の美々信号場は、複線本線の間に上下列車が待避可能な単線1線が設けられたシンプルな構造です。旅客駅として機能していた時代は、地上駅で、駅舎に面した単式ホーム1面1線（3番線）と島式ホーム1面2線（2番線と1番線）の計2面3線のホームを有していました。これらのホーム間は跨線橋によって連絡されていました。当時は千歳駅が管理する無人駅で、簡易式のKitaca改札機が設置されていました。旧駅舎については、信号場の管理用施設として今後も維持される方針が示されています。

由来

信号場名は所在地の地名「美々」に由来します。この地名は、現在の美々川のアイヌ語名が転訛したものです。アイヌ語の原義については諸説があり、「ペッ・ペッ（pet-pet）」、すなわち「川・川」という意味、あるいは「ペペ（pe-pe）」で「水・水」を意味すると考えられています。同じくアイヌ語由来の旧称を持っていた駅には、豊浦駅（旧名：弁辺）や西神楽駅（旧名：辺別）などがあります。

利用状況

旅客営業を行っていた時期の利用状況は極めて少なかったことで知られます。例えば、無人化の契機の一つとなった1978年（昭和53年）時点での1日平均乗客数はわずか5名でした。JR北海道による2011年から2015年（平成23年～27年）にかけての乗降人員調査（毎年11月の特定の調査日）の平均も「1名以下」と記録されており、末期の利用者の少なさがうかがえます。

周辺

信号場の周辺には、国道36号線が通り、美々貝塚や千歳市環境センター、新千歳モーターランドなどの施設があります。信号場は新千歳空港駅と同じ千歳市美々内に位置しており、両駅間の直線距離は約3km未満と比較的近いです。しかし、信号場があるのは空港ターミナルビルから見て滑走路を挟んだ反対側に当たるため、かつて旅客駅であった時代に当駅で降車しても、空港ビルまではかなりの距離を移動する必要がありました。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道）
■千歳線
植苗駅 (H16) - （美々信号場） - 南千歳駅 (H14)

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