青墓宿

青墓宿：東山道の宿駅と源氏ゆかりの場所

岐阜県大垣市青墓町に存在した青墓宿は、古代から中世にかけて東山道に位置した重要な宿駅です。古くは「青波賀」「奥波賀」「遭墓」「大墓」「青波加」「青冢」などとも表記されました。不破関の東側にあり、平安時代末期から鎌倉時代にかけては遊女や傀儡師が多く住んでいたことで知られ、当時の歌謡集『梁塵秘抄』などにもその名を残しています。

特に有名なのは、『詞花和歌集』に収められた歌、「はかなくも今朝の別れの惜しきかな　いつかは人をながらえて見し」です。これは青墓宿の傀儡女、名曳（なびき）が詠んだものと伝えられています。この歌は、儚い別れを惜しむ女性の心情を繊細に表現しており、青墓宿の風情を感じさせる名歌と言えるでしょう。

青墓宿は、河内源氏とも深い関わりを持っていました。『吾妻鏡』には、建久元年（1190年）10月29日、源頼朝が上洛の途中で青墓宿に宿泊し、宿の長者である大炊兼遠とその娘を召したことが記されています。さらに、頼朝の祖父である源為義が大炊兼遠の姉を妾としていたこと、頼朝の父である源義朝も東国と京都を往復する際に大炊の家に宿泊していたことも明らかになっています。

これらの記録から、青墓宿と源氏一族との繋がりは非常に深く、頼朝の上洛や義朝の東国への往来において重要な役割を果たしていたことが分かります。この関係性は、『保元物語』や『平治物語』といった歴史物語にも反映されており、青墓宿は単なる宿駅以上の存在であったことが伺えます。

戦国時代には、浅井氏の侵攻によって青墓宿は荒廃したと伝えられています。詳細な状況は不明な点も多いですが、安土桃山時代の浅野長吉の文書には、戦乱で逃げ出した町人を青墓宿に戻そうとする記述が残されています。このことから、『岐阜県の地名』では、戦国時代まで東山道の宿駅として存続していたものの、遊女の宿としての性格は失われた可能性が高いと推測しています。

青墓宿は、歴史的にも文化的にも重要な場所であり、源氏ゆかりの宿駅として、そして遊女や傀儡師が活躍した独特の雰囲気を持つ宿駅として、その存在は後世に語り継がれるべき貴重なものです。その歴史を紐解くことで、古代から中世にかけての東山道の様子や、人々の生活、そして源氏一族の動向をより深く理解することができるでしょう。また、小栗判官にまつわる伝説「照手の車引き」の舞台としても知られ、歴史と伝説が織りなす魅力的な場所と言えるでしょう。さらに、今後の研究によって、青墓宿に関する新たな発見が期待されます。

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