耀龍四間飛車

耀龍四間飛車：美濃囲いを捨て、新たな境地を開いた革新的戦法

将棋界に新たな風を吹き込んだ「耀龍四間飛車」。この戦法は、プロ棋士の大橋貴洸氏が体系的に研究し、2020年に発表したものです。その革新的な発想と実戦での効果から、2021年には大橋氏は将棋大賞の升田幸三賞を受賞、将棋界に大きな衝撃を与えました。

3八玉型を基軸とした柔軟な対応力

耀龍四間飛車は、従来の四間飛車とは異なるアプローチを取ります。最大の特色は、一般的な美濃囲いではなく、3八玉型（後手なら7二玉型）の囲いを採用することです。この独特の陣形は、一見すると不安定に思えるかもしれませんが、大橋氏は「1筋の端攻めで玉が遠い」「地下鉄飛車への移行がスムーズ」「相手の角筋から玉が外れている」といったメリットを挙げています。

さらに、この3八玉型は、天野矢倉、土居矢倉、右玉、地下鉄飛車、金無双など、様々な囲いに発展させることができます。状況に応じて柔軟に対応できる点が、耀龍四間飛車の強みと言えるでしょう。

穴熊囲いへの対抗策：端攻めによる勝利への道

振り飛車に対しては、居飛車穴熊が天敵として知られています。従来の四間飛車は、穴熊に囲われる前に崩すことを目指す戦法が多かったのですが、耀龍四間飛車は、あえて相手に穴熊を構築させた上で、端攻めによって勝利を掴むことを目指しています。

美濃囲いで端攻めを行うと、反撃を受けるリスクがありますが、玉を一路ずらすことでこのリスクを軽減。この発想の転換は、藤井猛氏によって「藤井システムに匹敵する衝撃」と評されるほど、画期的でした。藤井システムが美濃囲いを用いながらも玉を囲わないという発想だったのに対し、耀龍四間飛車は美濃囲い自体を放棄する、より大胆な発想と言えるでしょう。

実戦での成功例と普及

耀龍四間飛車は、2018年のNHK杯テレビ将棋トーナメントで、当時新人棋士だった大橋氏がA級トップ棋士である三浦弘行氏に勝利した際に使用されました。この試合では、大橋氏は三浦氏の居飛車穴熊に対し、見事な端攻めで勝利を収めました。この勝利は、耀龍四間飛車の有効性を証明するものでした。

2020年の書籍出版以降、耀龍四間飛車は他のプロ棋士にも広く採用されるようになり、その普及は、大橋氏の升田幸三賞受賞に大きく貢献しました。

「耀龍」というネーミングと書籍タイトル

「耀龍」とは、大橋氏が考案した造語で、「あらゆる駒を輝かせ、龍のように舞い上がり勝利へ導く」という意味が込められています。この名称は、耀龍四間飛車に限らず、大橋氏の戦法全般に使用されています。

また、書籍『耀龍四間飛車　美濃囲いから王様を一路ずらしてみたらビックリするほど勝てる陣形ができた』のタイトルは、その長さから話題となりました。大橋氏と編集担当者の島田修二氏は、このインパクトのあるタイトルが、書籍の販売に大きく貢献したと述べています。通常、戦法が流行してから解説書が出版されるのが一般的ですが、この書籍は、出版後に戦法が流行したという点でも異例と言えるでしょう。

まとめ

耀龍四間飛車は、美濃囲いを放棄し3八玉型を採用するという、従来の常識を覆す大胆な戦法です。その柔軟性と、端攻めによる強力な攻撃力は、多くのプロ棋士に影響を与え、将棋界に新たな潮流を生み出しました。大橋貴洸氏の創意工夫と、書籍出版という戦略が相まって生まれたこの戦法は、これからも将棋界の発展に貢献していくことでしょう。

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