肉形石

肉形石について

肉形石（にくがたせき）は、清朝時代に制作されたとされる、豚の角煮（東坡肉）を模した彫刻作品です。そのサイズは、長さ5.3センチメートル、幅6.6センチメートル、高さ5.7センチメートルと、手のひらに乗るほどの大きさです。現在は、台北市にある国立故宮博物院に所蔵されています。

素材と製法

肉形石の素材は、粘土鉱物などを含む不透明な玉髄です。この玉髄は、含有物が層状に積み重なることで独特の縞模様を生み出しています。特に注目すべきは、豚の皮を模した表面の緻密な加工です。小さな穴がびっしりと開けられており、これは豚肉の毛穴や粗い肌触りを表現するためであると同時に、染料を定着させる役割も果たしています。この表面は、醤油が染み込んだようなテリを出すために、赤褐色の染料で着色されています。他の面も暗褐色の染料で染められており、全体的に深みのある色合いを呈しています。

肉形石は、波を模した装飾が施された台座に乗せられていますが、この台座の由来や詳細については、現在も解明されていません。

故宮博物院の至宝

肉形石は、同じく台北国立故宮博物院に所蔵されている「翠玉白菜」、そして北京故宮博物院所蔵の「清明上河図」と並び、故宮博物院の三大至宝とされています。その貴重さから、通常は故宮博物院の外に出ることはありません。しかし、2014年10月から九州国立博物館で開催された「台北国立故宮博物院展」で特別に展示され、日本でもその姿を見ることができました。

エピソード

肉形石は、もともと紫禁城の「養心殿」に展示されていました。「養心殿」は、雍正帝以降の皇帝が執務を行い、寝室としても使っていた場所です。1924年、清朝最後の皇帝である溥儀が紫禁城を追われた後、1925年に故宮に残された文物を調査した清室善後委員会のメンバーが、この肉形石を見て、そのあまりにもリアルな見た目から「豚肉の化石」と目録に記したという逸話が残っています。このエピソードからも、肉形石の精巧な出来栄えと、見る者を魅了する力が伺えます。

参考文献

「特別展　台北国立故宮博物院　神品至宝」編集；東京国立博物館、九州国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社、産経新聞社、フジテレビジョン、朝日新聞社、毎日新聞社（2014年）310ページ

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