胎内第一ダム

胎内第一ダムは、新潟県胎内市を流れる二級河川・胎内川の本流に建設された、新潟県営の発電専用ダムです。コンクリートの重さで水圧を支える重力式コンクリートダムで、その高さは35メートルです。貯えられた水は、直下ではなく約9キロメートル下流に位置する胎内第一発電所に送られ、最大で1万1,000キロワットの電力を生み出しています。

建設の背景と歴史

胎内川は、源流部の飯豊山地から日本海へと流れ下る過程で、特に上流部の胎内渓谷において急峻な地形を形成しています。この地理的条件に加え、豪雪地帯であるため、流域面積の割に河川の水量が多いという特徴があります。新潟県企業局は、この恵まれた地形と豊富な水資源に着目し、1957年（昭和32年）に胎内川水系における水力発電開発計画を立ち上げました。

この計画では、胎内川本流に二つのダムを建設し、それぞれに発電所を設ける構想でした。具体的には、上流側に胎内第一ダムと胎内第一発電所、下流側に胎内第二ダムと胎内第二発電所を配置し、これらを合わせた最大出力は1万4,600キロワットを予定していました。

建設工事は、まず下流側の胎内第二ダムから着手されました。しかし、1959年（昭和34年）7月には建設途中で記録的な大雨に見舞われ、工期が約1か月遅れる事態となりました。それでも同年10月には完成し、ダム直下に設けられた胎内第二発電所が運転を開始しました。続いて1960年（昭和35年）には、より上流に位置する胎内第一ダムの建設が始められました。

胎内第一発電所は、第二発電所のようにダムのすぐそばに発電所がある形式ではなく、ダムから長いトンネル（導水路）で水を遠くまで運び、大きな高低差（落差約160メートル）を利用して発電を行う「ダム水路式」と呼ばれる方式を採用しています。このトンネル工事は、地盤が不安定であったことから難航しました。さらに、建設期間中には冬の異常ともいえる記録的な豪雪が発生し、工事の進行に大きな影響を与えました。これらの困難が重なり、当初の予定から工期は約10か月も遅れることとなりましたが、1962年（昭和37年）10月にようやく完成を迎えました。

治水対策と水系施設

しかし、完成後間もない1966年（昭和41年）7月と、特に1967年（昭和42年）8月には、胎内川流域は大規模な水害に見舞われました。特に1967年の水害は「羽越水害」と呼ばれ、激しい雨によって増水した胎内川はダムを満水にさせ、さらには堤頂部を越えて溢れ出る事態となり、発電所施設も水没するなど大きな被害が発生しました。胎内第一ダムも胎内第二ダムも、建設当時は主に発電を目的とした「利水ダム」であり、洪水調節能力は持ち合わせていませんでした。

この水害を教訓として、胎内川における治水能力の強化が急務となりました。その結果、1976年（昭和51年）には、胎内第一ダムと胎内第二ダムの間に位置する場所に、洪水調節を主な目的とする多目的ダムとして胎内川ダムが新たに建設されました。

さらに、この胎内川水系では水資源の有効活用を目指し、追加の発電施設も整備されてきました。例えば、胎内第二ダムより下流の砂防施設を利用した胎内第三発電所（出力2,000キロワット）や、新設された胎内川ダムに付設された風倉発電所（出力2,000キロワット）などがあります。計画当時は、胎内第一ダムよりもさらに上流に建設が進められていた奥胎内ダムにも、胎内第四発電所（出力2,600キロワット）が付設される予定でした。

周辺とアクセス

胎内第一ダムやその周辺施設を訪れるには、日本海東北自動車道の中条インターチェンジから国道7号（中条黒川バイパス）を北上し、胎内川に架かる黒川大橋で右折して新潟県道53号胎内二王子公園羽黒線を上流方面へ進むのが一般的です。

県道を進むと、まず下流側の胎内第二ダムが見えてきます。中央に一つだけ設置された洪水吐ゲートや、片流れの屋根を持つ管理棟などが特徴的です。胎内第二ダムを過ぎると、胎内第一発電所へ水を送るための銀色の水圧鉄管が山の斜面を駆け下りている様子が目に入ります。発電所施設を通過し、次に治水ダムである胎内川ダムを越えると、目的地の胎内第一ダムに至ります。胎内第一ダムも、胎内第二ダムと同様に中央に一つ設けられた洪水吐ゲートや片流れの屋根を持つデザインであり、二つのダム間で共通点が見られます。

胎内第一ダムのさらに上流方面には、奥胎内ヒュッテがあります。このヒュッテは、胎内川の源流域に位置する飯豊山地への登山口として利用されており、自然豊かな周辺環境とともに、アウトドア愛好家の拠点ともなっています。周辺一帯は、ダムや発電施設といった土木構造物と、胎内渓谷の美しい自然景観が共存する地域となっています。

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