胡林翼

胡林翼（こ りんよく、Hu Linyi、1812年 - 1861年）は、清王朝末期の重要な官僚であり、字（あざな）は貺生（こうせい）、号は潤之（じゅんし）と称しました。彼は湖南省益陽県の出身です。

1836年、胡林翼は進士の試験に合格し、翰林院編修という職に就きました。その後、貴州省の安順と鎮遠の知府（地方長官）を歴任し、この地でミャオ族の蜂起や湖南省で発生した李沅発の乱を鎮圧する活躍を見せました。その功績が認められ、湖南巡撫の張亮基や駱秉章から招聘を受けましたが、彼は貴州に留まることを選びました。

1854年、胡林翼は貴東道という役職に任命され、貴州の郷勇千人を率いて湖南省や江西省で太平天国軍との戦いに身を投じました。翌1855年には湖北布政使に任命されますが、その直後に太平天国軍が再び武昌を陥落させたため、胡林翼は曽国藩と共に武昌の奪回作戦に参加し、1856年にこれを成功させ、その功績により湖北巡撫に昇進しました。さらに、1857年には黄州に侵入した陳玉成の軍勢を撃破するなどの戦果を挙げました。

1858年、胡林翼は九江を陥落させ、安慶を包囲する作戦を指揮しました。しかし、同年11月、胡林翼軍の主力であった李続賓の部隊が三河の戦いで壊滅的な打撃を受け、勢力を一時的に後退させざるを得なくなりました。翌年、胡林翼は曽国藩と共に兵を四分し、安徽省への侵攻を開始しました。1861年春、太平天国軍が湖北省に侵入すると、胡林翼は部隊を率いて救援に向かいましたが、その間に曽国藩の弟である曽国荃が安慶を攻略し、9月に陥落させました。しかし、その直後の9月末に、胡林翼は武昌で病に倒れ、その生涯を終えました。

胡林翼は、曽国藩、李鴻章、左宗棠と並び、「中興の名臣」と称えられています。その功績を讃え、文忠という諡号が贈られました。彼はまた、『読史兵略』という著書を残しています。

胡林翼は、卓越した軍事手腕と行政能力を持ち合わせ、太平天国の乱という激動の時代において、清朝の再建に大きく貢献した人物として、後世に語り継がれています。

もう一度検索