腺様嚢胞癌

腺様嚢胞癌（ACC）について

腺様嚢胞癌、もしくはACCは、比較的稀な種類の悪性腫瘍であり、主に涙腺や唾液腺、乳腺等、外分泌腺と呼ばれる部位に発生します。特に筋上皮細胞から由来しますが、まれに子宮など、通常筋上皮細胞を持たない器官にも形成されることがあります。これらの異常な細胞は、化生が進んだ結果か、多能性の上皮性幹細胞から発生したと考えられています。

主な特徴

腺様嚢胞癌は唾液腺腫瘍の中でも高い発生頻度を持ちますが、細胞の異型性はあまり見られません。しかし、浸潤性が強く、高い転移率を示します。治療後に再発するケースが多く、最終的には予後が不良となることがあります。腫瘍の特徴としては、篩状（スイスチーズ様）構造が挙げられますが、充実性や腺管状の構造が優位になることも少なくありません。

しばしば神経症状がみられ、顔面神経麻痺を伴うこともあります。転移先としては肺や骨、皮膚が報告されており、特に50歳前後の女性に多く発生します。腺様嚢胞癌の再発率は高く、増殖は比較的緩やかであるものの、顎下腺や舌下腺においては特に予後が不良です。

組織学的特徴

この腫瘍の組織学的特徴は、導管上皮様細胞と腫瘍性筋上皮細胞が大小さまざまな充実性の胞巣を形成し、浸潤していく様子です。胞巣内には大小の腔が見られ、篩状の構造を持つ胞巣は「スイスチーズ様」とも表現されます。これらの胞巣は、導管上皮様細胞で裏装された真の腺腔と、腫瘍性筋上皮細胞の基底面で囲まれた偽嚢胞とが区別されます。また、神経線維束を取り囲むように浸潤する様子も観察されます。

ただし、篩状構造を持つ唾液腺腫瘍は多いため、単に篩状構造が見られるからといって、直ちに腺様嚢胞癌と診断することは避けるべきです。この点においては、十分な鑑別診断が求められます。

治療と予後

腺様嚢胞癌の治療には手術が主な手段として用いられますが、周囲の神経への浸潤も多いため、十分な安全域を確保することが重要です。また、再発が非常に多いため、治療後は慎重な経過観察が必要です。予後については、腫瘍の発生部位や浸潤の程度により異なり、特に顎下腺や舌下腺においては不良なケースが相次いで報告されています。

腺様嚢胞癌は、がんの中でも特異な病態を持つため、専門的な知識が求められます。早期発見と適切な治療が、患者の生存率を高める要素と言えるでしょう。

もう一度検索